そのようなわけで、今年もあと一日となりました。
2011年最後の更新になります。
今年はだいぶペースを落として、新作に取り組む一年でした。
ちょっと作品ごとに振り返ってみますね。
■『ほうらいの海翡翠』(角川書店)
今年の仕事の初めがこれでしたので最初に。無事年内に発表できてホッとしています。
遺跡の調査報告書などを積んで、うんうん調べながら書いてましたが、昔から思い入れのある土地が舞台だったこともあって、書くのは楽しかったです。調べるほど発掘や考古学に対する興味が湧きました。無量は「生意気な年下男子」ですが、今の私の「21才」に対する印象がそうさせるのか、何となくかわいくなってしまいました。
初めて行った与那国島や石垣島では、南国の空気に癒されました。私はどちらかというと北の感性だと思っていたのですが、南国の濃い空気は案外、肌に合うとまた実感しました。台風大変でしたが。
海底資源のことなどは、もたもたしていると現実に追いこされそうでしたので、ちょっと頑張りました。
(ちなみに無量のネーミングですが、陸上選手の高瀬無量選手の活躍を箱根駅伝で拝見して「一度聞いたら忘れられないお名前だな」と感動し、いつか拙作の主人公につけさせていただきたいと思っていたのでした…。※もちろん人物造形などはご本人とは全く関わりございません)
■『真皓き残響 仕返換生』(集英社コバルト文庫)
短中編集で、最後の一編だけ書き下ろしでしたが、ちょうど震災の時と重なったこともあり、このテーマを書くのは少ししんどかったです。
でも換生は彼らが背負う最も重い主題であり、真っ向から向き合わねばならない罪でもあるので、ここはしっかり地に足をつけて書こうと思いました。
個人的には、色部さん主役の短編が気に入ってます。
これの発売合わせでサイン会も開きました。まだ世間全体に震災の影響が色濃く残る中、皆さんのお顔が見れて大変心強かったです。ありがとうございました。
■『犠牲獣』(リブレ出版ビーボーイ・ノベルズ)
こちらは三年前に発表したものに加筆と書き下ろしを加えたものです。7月に発売されました。
『犠牲獣』の終わり方は、一種のリドル・ストーリーになるかと思います。賛否もあったと思いますが、そもそもリドル・ストーリーとは、結末を読者任せにするという意味でなく、物語のテーマ性・ドラマ性において、これ以上書く必要がない、という書き手の判断ゆえの「リドル」なのだ、ということを、書いていて理解しました。
また「あえて描かないことで描く」というのを教えられた作品でもあります。
バフラムの感情エネルギーはゼロから一気にMAXまで駆けのぼります。対するサクの感情エネルギーは最初からMAXなのですが、その性質が極から極へと入れ替わる…。そんな気持ちのダイナミズムのようなところも、味わってもらえると嬉しいです。
■「神王の禁域」(『小説be-Boy 8、9月合併号』掲載・リブレ出版)
今年唯一の雑誌掲載でした。アンコール・ワットに行った時に仕入れた神話をベースにしてみました。一度悪辣な主人公というのを描いてみたかったのです。でも思いのほか可愛くなっちゃいました。あと、ナガが存外純真な肉食になっちゃったので、書き終わったらほのぼのしてしまいました。おかしいな…。
いずれ、もうちょっと加筆して一冊に収録できれば、と思います。
他、これから発表を控えている新作を二作ほど手がけました。
冬には発表できるはずでしたが、ちょっとずれこみそうです。
もう少しお待ちください。
こちらも詳細が出次第、お知らせします。
あとはマンガのほう。『イルゲネス』の新シリーズが始まりました。震災の影響で発売が予定より遅くなりましたが、『イルゲネス 偽翼の交響曲』1巻発売中です。フォン達がちょっと大人っぽくなって、登場です。今回の話でパージ・チルドレンのサガというところを描ければいいなと思います。ギャビィちゃんがイチオシです。
こんなところでしょうか。
(長くなったので、続きます)