Diary

35周年トークイベントありがとうございました。

  • 2025/12/14 20:52

12月6日に行われました「桑原水菜&炎の蜃気楼35周年のトークイベント」にご来場くださった皆さん&配信視聴してくださった皆さん。
ありがとうございました!!
おかげさまで大盛況のうちに幕を閉じました。
少女小説研究家の嵯峨景子さんがMCをつとめてくださり、懐かしいお話をたくさんさせていただきました。
さすがに35年も前の話となると、記憶も怪しくなるところですが、ミラージュについては作者本人にとっても強烈な記憶の数々だったため、結構覚えてるものだなあ、と自分で感心してしまいました。
(キャラの名前が出てこなかったりしましたが……。ごめんね礼ちゃん)
ただミラージュに関しては読者のみなさんのほうがよく覚えているようで、私がうろ覚えな場面で「でしたっけ?」的に皆さんのほうを見やると「うんうんうん」とすごいうなずいて教えてくれる方もいたりして、心強かったです。
改めて、ミラージュとは読者の皆さんにとって本当に大切な作品なのだな、ということをひしひしと感じましたが、それが一過性のものでなく、今も胸の底に大切にしまってあるだろうことに、胸が震えました。
若い頃に触れた作品は特別、とは申しますが、本当にそうだな、と。
古豪(?)の方だけでなく、最近読みました、という方もおられて、こちらも嬉しかったです。小説のほうは終わってからもう8年経ちますが、いまなお、こうして初めて手にとってくださる方々がいるのは励みになります。
出会ってくれてありがとう、と心から思いました。
本当に楽しいひとときでした。
(ただ熱気で部屋が結構暑くなってしまい、途中で気分悪くなる方など出なかったか、ちょっと心配になりましたが、……大丈夫でしたでしょうか?)


嵯峨さんの司会進行は、読者の皆さんに寄り添って熱く濃く、同じ読者ならではの視点がふんだんにあったのがさすがでした。普段、大学などで講師もされてるだけあってお話もよどみなく進行もスムーズで、人前で話すことは滅多にない私でも安心してお話させていただきました。
講義もする上に、このようなイベントでのMCもやってのけるとは。本当にありがとうございました。これからは嵯峨先生とお呼びしなければ!

当日は挿絵&コミカライズを担当してくださった浜田翔子先生、ミラージュ紀行漫画やオウギチャンネルでおなじみのくすみことこ先生、『赤の神紋』の挿絵担当・藤井咲耶先生も来てくださり、見守ってくださいました。インタビュー記事等をいつも担当してくださったライターの垳田はるよさん、取材に何度もつきあってくれた高校からの友ありちゃんも。当日はバタバタしてゆっくりご挨拶もままなりませんでしたが、来てもらえてすごく嬉しかったです。
35周年という長い歳月、一緒に歩いてくれた方々への感謝を噛みしめました。

今回はコバルト・オレンジ文庫編集部一同による手作り感溢れるイベントで、当日運営に不慣れな点もあったかとは存じますが、編集部総出で準備して頑張ってくださいました。なかなかこれだけの読者さんと生でお目にかかる機会はないので、編集部の皆さんにとっても「読者の熱」を直に受け止めるよき機会となったのではと。
一方、配信スタッフの皆さんはめっちゃガチのプロ集団で、万全の態勢で配信をさせていただきました。
このイベントにかかわってくださった皆さんに感謝申し上げます。


つきましては、
12月15日(月)~22日(月)まで
期間限定でイベントの様子をアーカイブ配信いたします。


アーカイブ配信チケットは Peatix  にて販売中。
【チケット代】1,000円

ご好評につき【事後販売】という形で発売しました。イベントを後から知った方、買いそびれてしまったなどはぜひアーカイブ配信をご利用ください。(詳しくはオレンジ文庫Xアカウントにて)
会場に来られなかった方は、ぜひこの機会に。

よろしくお願いいたします。

思いもよらず年末にかけて二回続けてトークイベントという展開になり、
私自身もびっくりしましたが、皆さんとお目にかかれて、たくさんの熱量を浴び、大いに刺激を受けました。
ありがとうございました。

先週は再び取材も行きまして、そろそろ腰を落ち着けて執筆に没頭することにします。
12月25日には新刊『遺跡発掘師は笑わない 土に埋もれた星は』(角川文庫)
が発売します。クリスマスです。
こちらもよろしくお願いいたします!

新刊&35周年イベントのお知らせ

  • 2025/11/17 19:01

ついこの間まで半袖だったのに暖房を入れる寒さになってきました。
すでに晩秋の気配が漂っていますね。
さて、お知らせ2点です。

①新刊『遺跡発掘師は笑わない 土に埋もれた星は』
 装画 睦月ムンク先生 角川文庫

 今回は久しぶりの短編集。四作収録しております。
 巻末には今まで無量が掘り当ててきた出土遺物の図録も!
 12月25日発売です。

②桑原水菜&『炎の蜃気楼』35周年記念トークイベント

 Xのほうで予告しておりました35周年記念イベント。
 オレンジ文庫さんから詳細が告知されました。
 以下の通りです。

*******

 【日時】12月6日(土)14時~16時(開場13時30分)
 【場所】東京・神保町某所(チケット購入された方に詳細な場所をお知らせします)
 【チケット】2000円
 【定員】100名

  チケットは11月19日(水)19時よりPeatixにて発売
  (オレンジ文庫公式Xにて同日同時にPeatixのURLをポストします)

*******
 当初、35周年は特になにもしない予定だったのですが、先日のよみうりカルチャーのトークイベントでの皆さんからの「ぜひ!」とのお声に背中を押され、なんとか開催にこぎ着けました。
 司会進行は引き続き、嵯峨景子さんです。↑のイベントでお話ししきれなかった分などもお話できれば、と存じます。
もろもろのスケジュールの関係でこの日程となりましたが、ご都合のつくかたはぜひ。お待ちしております。

【追記】11/22
会場チケット分完売につき、急遽、追加分の発売が決まりました。
配信チケットも同時に発売します。

どちらのチケットも 11月28日(金)19時よりPeatixにて発売
(詳しくはオレンジ文庫公式Xにてご確認ください)

 

一人芝居『憑』閉幕

  • 2025/10/27 00:46

俳優・富田翔さんの一人芝居『憑』が10月17~19日恵比寿のエコー劇場で上演されました。
私は原案を担当いたしました。
あれは7月下旬でしたか。舞台ミラージュで景虎を演じた富田さんから、一人芝居の企画を練っているとのことで「お知恵を拝借したい」とご相談いただいたのが事の起こり。「芝居中に書を書きたい」と真っ先に仰っていたのでそれを叶えるモチーフ(原案)をご提案させていただきました。
「1文字の書で死者を成仏させる話」。
とても気に入ってくださってその場でタイトルも決まり、演出の田邊俊喜さんからもすでにその場で「ブラックライトを使った演出」のアイデアが飛び出してきたりして大変エキサイティングでした。

往生文字という発想の源は真言密教の「仏の種子(しゅじ)」(毘沙門天でいうところの「バイ」←梵字の頭文字)。
その1文字で、その仏の全てや本質を表すとされる文字です。
これを「人間の一生」を表すものとして表現してみてはどうだろう、と。
翌日、そのアイデアとオチに至るまでのざっくりした構成を簡単にまとめたものを提出して私の仕事はおわり。

個々のエピソードをはじめ、あの見事なストーリーラインはすべて脚本担当のほさかようさんが考えてくださったものです。(原案で決まってたのは「〆切に追われる男」とオチ。私が書いた台詞も「文字をくれ、文字をくれ、私を浮かばす文字をくれ」だけ)

ですので、プロットをいただいた時はびっくりしました。まさかガッツリ小説家が主人公の話になるとは…! しかも偽物本物というテーマ。「おお!これくるかぁ!」と興奮しました。
私には大変馴染み深いテーマ。
(全然関係ないんですが、あのエコー劇場の建物にあるスタジオ。赤の神紋のドラマCDのオーディションをやった場所でした)

原案は原作ではないので、そのあとはもう製作が進んでいくのをオブザーバーのように見守っておりました。(最終稽古は拝見しました)
私が差し出した小さい種が、あんなに素晴らしい舞台になって目の前に出現したことが本当に凄くて、富田さんと田邊さんをはじめとするスタッフの皆さんの創造力に感銘を受けました。
劇中、原稿用紙を抱きしめていた紫村の姿が、懐かしくて切なくて…。
(どういう懐かしさかというと、ドラマ新説三億円事件で山崎努さん演じる中年男が織田裕二さん演じる青年をみて「あの海でまたおまえが懐かしくなった」という類いの)
舞台を観ながらいつしか自分自身の来し方を振り返っていました。

終わってから思ったのですが、あの一人芝居の源流には富田さんご自身のファミリーヒストリーがあったかと。
偉大な書家であるお祖父様、その名を抱いて同じ道を歩み、繋げ、拓き続けておられるお母様、そして富田さんへ。三代にわたり綿々と受け継がれていく「書」くことへの想いが「演劇」を得て、そこにあるように感じました。
(往生文字の着想には以前お招きいただいた一門展からのインスパイアがきっとあったかと)

田邊さんも仰ってましたが、この素晴らしい舞台を作り上げたひとたちを、繋げたのは、まさに「仏縁」。
私もそう感じましたし、その縁を引き寄せたのは、表現にたずさわるひとたちの熱い意志だったように思えます。

ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。
アフタートークでは盛大な出とちりをかましてしまいましたが(大変失礼いたしました!)「あの千秋楽のすごい空気の中でトークってどうやればいいの……」と震えていたので、おふたかたとお客様方が和やかな空気にしてくださってほっとしました。

千秋楽公演は現在アーカイブ配信中(11月3日まで)。

カンフェティにて配信チケットが購入できますので、劇場に来られなかった方々、気になってる方々もぜひご覧くださいませ。


演劇は本当に非日常の祝祭空間ですね。
ありがとうございました。

トークショー「新井素子と桑原水菜が誘う『コバルト』の世界」

  • 2025/10/24 21:26

先日、読売本社ビルにて行われました、よみうりカルチャー主催
トークショー「新井素子と桑原水菜が誘(いざな)う『コバルト』の世界」
ご来場の皆様&配信視聴された皆様、ありがとうございました。
久しぶりに読者の皆様と直接お目にかかれて、とても嬉しかったです。

今回は新井素子先生との登壇とのことで!
素子先生がコバルトで出された御本はどれも、中学時代に夢中で読んだ作品であり、私がコバルト文庫という少女小説レーベルを知ったきっかけでもありました。
とても緊張しましたが、素子先生は気さくで明るくて優しくて、懐の深い方でした。素子先生の「星へ行く船」シリーズのお話や80年代のレジェンド作家の皆様とのお話は興味深く、レーベルの歴史を知るという意味でも大変貴重な機会でした。
驚いたのは、どうやら素子先生と私の創作方法は似ているかも、ということ。ぬいぐるみ遊びが小説に繋がっているという共通点が見つかり、めちゃめちゃ嬉しかったですし、自信がみなぎりました。
私の大好きな「一郎さん」のお話も(『・・・・・絶句』をぜひおすすめします)「一郎さん」の黒服が直江の源流であるという気づきも得て、震えました。
しかも遺跡発掘師シリーズを読んでくださっていたと聞き、ひいいっ!と。光栄です!
あれもこれもと思いは尽きないのですが、作家としての私の源流でもある素子先生とじかに色んなお話が出来たことで初心に立ち返ることもできました。この企画をお受けして心の底からよかった!と思いました。
素子先生、ありがとうございました!

ミラージュの話は「初期」を中心に。
ちょっと補足を加えなければ。「高耶と直江のモデルにしたような人はいますか」というような質問で、「高耶は私」と発言しましたが、あれはモニターのカバーイラストの高耶を見ていたら浮かんできた言葉なのでした。
まあ、35年のつきあいで、あの長大な小説のど真ん中にいたキャラは自分の投影というよりも自分の一部……いや一部というより私自身が「一番長く潜ったキャラ」ですから、一部というより一心同体? 私はキャラが憑依するというより、キャラに潜るタイプなので。それは直江も一緒で。(その一方で俯瞰して突き放す)
そういう意味の「私」でしたことを付け加えたく。(あの発言で、ミラージュが私の夢小説だったかのような印象を与えてしまったのでは、と後から心配になってしまいまして。そういうことではありませんので)

思い返せば、高耶のイメージには織田裕二さんとか尾崎豊さんとか、不遜で少し屈折した若者像があったので、そちらを答えればよかったのか……。
(トークって立ち止まって推敲できないからむずかしいですね)
ただ表現の主体として自分の世界を「少年」に託したほうが投影しやすいということがあったのは確かです。

懐かしいお話をたくさんできて、楽しいひとときでした。
司会進行の嵯峨景子さんは少女小説&コバルト研究の第一人者で、非常に知識豊かでよどみなく、お話も巧みで熱量高く、絶妙なフォローもあり、トークが苦手な私でも楽しくお話させていただきました。
嵯峨さんが旗振り役となって「あの頃のコバルト」の魅力を発信し続けてくださっていることは少女小説の再評価にも繋がっていると思いますし、何より嵯峨さんの熱く貪欲な姿勢に刺激を受けました。
嵯峨さん、本当にありがとうございました!

そして、この企画を起ち上げた大宅壮一文庫の皆様。
当日は大宅壮一文庫から雑誌Cobaltのミニ展示もされていて、どれもこれも懐かしく。しかもこの日のために私が1993年に出したミラージュの同人誌までゲットしてきてくださったとのことで……!(並んで展示されてました)その心意気にグッときました。
大宅壮一文庫さんでは現在、コバルト50周年企画としまして雑誌Cobalt全号展示企画を開催中(~11月15日まで)
創刊号から雑誌Cobaltをすべて閲覧できるという大変貴重な企画です。
雑誌Cobaltで青春時代を過ごされた方、ぜひぜひ足を運んでみてくださいませ。見逃した号や雑誌にしか載らなかった挿絵、様々な企画などなど、一日いても足りないかも。有料ですがコピーも取ってもらえるそうです。
私も折を見て訪問したいと思います。
大宅文庫の皆様、ありがとうございました!

トーク終了後はサイン会も。皆さんが持ってきてくださった本、35年ものの1巻から最新の「荒野は~」まで、ミラステのBlu-rayBOXブックレットやイラスト集、遺跡発掘師シリーズ……僭越ながら、自分の歴史を感じました。明らかにコバルト世代ではないであろう20代の受講者さんもいらして幅広さを感じました。
会場の熱気もすごくて、往年の「おちゃべりパーティー」を思い出しましたよ。
嵯峨さんがトーク中にちらっとふってくれた「35周年に何かやりませんか」。実現できるかどうか、いま編集部などで探ってくださっているようなので、もし何か動きがあったら、そのときはお知らせしますね。

実は当日、会場には若木未生先生も駆けつけてくださっていまして。ともに90年代を盛り上げた戦友であり、永遠のライバル。久しぶりに会えて嬉しかったし、激励も嬉しかった。
若木さんありがとう、グラスハートのドラマ化もおめでとう。これからもお互い頑張って書いていこうね。

35周年を前にこれほど初心にかえる機会はありませんでした。
素晴らしい時間でした。
皆さん本当にありがとうございました!

『荒野は群青に染まりて -赤と青-』発売

  • 2025/10/20 20:56

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立て続けのイベントで更新が遅くなってしまいました!
10月の新刊は無事発売しました。

『荒野は群青に染まりて -赤と青-』
(装画 Re°先生)

 集英社オレンジ文庫

三ヶ月連続刊行の最後を締めくくる番外編です。
Re°先生描き下ろしのカバーイラストも、赤と青の義兄弟。当初、編集部からは「背中合わせなどどうでしょう」と提案していたのですが、Re°先生がお話を読んだところ、ふたりが向き合っている構図が思い浮かんだので」と仰ってくださって、ならば、とこの形にしていただきました。
赤城はことあるごとに群青の髪をわしゃわしゃかきまぜてましたよね。

暁闇編にあたる昭和21~23年のお話。
まだバラック暮らしをしていた頃の物語が二編、さらに群青の高校時代のお話を二編書き下ろしました。

【焼け跡のひなまつり】
佳世子が闇市でもらった女雛。群青たちは失われた男雛の代わりを探そうとするが。
【マムシとりんご】
戦災孤児グループのボスが上野に戻ってきた! 群青とリョウはトラブルに巻き込まれることに。
【B.B.B ~ブルー・ブラザーズ・ブギ】
思春期に入った佳世子はやけに群青への当たりがきつく、赤城が理由を聞き出そうとするが。
【アカマツの聳える丘で】
東海林は帝銀事件の犯人……!? ふってわいた騒ぎに赤城と群青は?


オレンジ文庫のWEBサイトにインタビューが載っていますので、ぜひお読みください。但し、盛大なネタバレがありますので、できれば本編を読み終えてから読むことをおすすめします。(自己責任で……)

番外編はありあけファミリーのホームドラマとなりました。
企業ものも初めてならホームドラマを書くのも初めてです。
初めてづくしの「荒野は~」シリーズでした。
この時代は書くのも簡単ではありませんでしたが、書き終えてみると、この世界にずっといたいくらいに楽しかった。赤城と群青の義兄弟が大好きでした。兄貴肌で皆に信頼され強いリーダーシップで仲間を引っ張る赤城、誰よりも赤城のような男になりたいと願いつつも相反する複雑な気持ちをもてあましてしまう群青。血の繋がらない他人同士が兄と弟になっていく、その関係性はもどかしいこともありましたが、心の底で固く繋がっていて、少しうらやましくさえありました。特に相剋編の赤城の弱さや群青の葛藤、からの共闘は筆が躍りました。
リョウも大好きでした。ある意味、今まで書いてきた人物造形の中で私が一番「素の自分」で書いたと思えた。いつか書いてみたかった。書けて良かった。
近江と佳世子の素顔を描けたおかげで、私の中のありあけファミリーの結束も深まった気がします。
どのキャラも大好きでした。あの黒田専務でさえ!
書けば書くほどドラマの種が詰まっていて凄い時代でした。
機会があればまた、この時代を書いてみたい。

三冊揃いましたので、ぜひこの機会にお手に取ってみてください。
待たずに一気読みできます。
そして感想をぜひ教えてもらえると嬉しいです。
ご愛読ありがとうございました。

文庫版『荒野は群青に染まりて 相剋編』発売

  • 2025/09/18 23:11

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『荒野は群青に染まりて 相剋編』(装画 Re°先生)
 集英社オレンジ文庫

本日発売しました。

『荒野は群青に染まりて』シリーズ、3ヶ月連続刊行の第2弾です。
暁闇編のラストから9年後、昭和34年から物語は始まります。
倒産の危機に遭い、大手企業の子会社となってしまったありあけ石鹸。
社長だった赤城は一社員となり「市場調査部」に配属されています。
新経営陣と新旧社員たちの軋轢の中で、苦しむ赤城。
群青はいまだに行方不明のままでしたが、思わぬ形で再会することに……。

暁闇編とは少し様相が変わりまして、舞台はありあけ石鹸という会社。

集団内の派閥や力関係などを描きたいと思っていたところでした。この企画を起ち上げた時の担当さんは、かつて赤鯨衆を描いた時の「集団の群像劇」な面を気に入ってくれたようで、そういう群像劇を今度は会社を舞台に描いてみないか、と提案してくれたのがはじまりでもありました。

今回の相剋編はもちろん暁闇編と同じく、群青と赤城という義兄弟が物語の柱ですが、彼らをとりまく人々の思惑は見どころのひとつだと思っています。
昭和の製造業を書くのはなかなかに骨でしたが、熱をもって描くことをモットーとしました。きっと楽しんでいただけると思います。(分厚いけど)

巻末には文芸評論家の細谷正充氏の解説を掲載しております。
とても読み応えがあり、私の執筆歴に加え、書き手の意図までもしっかり汲み取っていただけた上に、昭和三十年代の企業小説にまで触れられていて感銘を受けました。
細谷様、ありがとうございます。
以前、時代小説アンソロジーで「箱根たんでむ」をチョイスしてくださったご縁もあり、この度解説をご寄稿いただけたこと大変嬉しく思います。
この場を借りて、心より御礼申し上げます。

9年後の登場人物たち、それぞれの変化が書き応えありましたが、特にリョウが楽しかった。リョウは楽しかったなあ(二度言いました)
もしかしたら私自身にとても近い人かも、とも感じました。
(あんなにかっこよくはないですが)
高度経済成長期はいいところだけではない、とんでもない時代だったと思いますし、小説でも触れたようにルール整備が社会の変化のスピードにまだまだ追いついていなかったために無茶や無法もまかり通っていたのではないかと。「猛烈」な時代の中で生き抜く人々の図太さ・しぶとさ、その裏での苦しみ悲しみ喜び、この時代に凝縮されたドラマティックなものたちが私を呼んでやまないのかもしれません。

あと昭和2、30年代の人々の口調が好きです。
なんだか、しっくりくる。
ちょっとすかした感じの言い回しとか、独特の時代感のある話し方。
すごく好きです。

さて、第三弾は番外編になります。サブタイトルは「―赤と青―」。
本編では書けなかったホームドラマ的なものが書けました。
10月17日頃発売予定です。
ご予約をしていただくと確実に発売日に入手できるかと存じます。

よろしくお願いいたします!

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