Diary

2011年12月の日記

寒くなってきましたね

  • 2011/12/07 21:39

お久しぶりです。すっかり月一更新になりかけてるので、これではいかん、と飛び出してきました。近況なぞをぼちぼち。
12月27日に新刊「ほうらいの海翡翠」が出ます。というのは前回お知らせしましたが、その発売合わせで「ダ・ヴィンチ」さんのインタビューを受けてきました。
今回は単行本ということで、あとがきがございませんので、その分諸々と語らせていただきました。新刊と合わせて是非どうぞ。一月上旬発売です。

そして先日、京都方面に取材に行って来ました。紅葉の季節ということで、久しぶりに目も心も腹も楽しんできた…という感じです。今年は遅い上に色がイマイチとのことでしたが、私には充分美しく感じられましたよ。
晩秋から初冬に至るあたりの京都は、空気も景色も、なんだか雰囲気があっていいですね。好きです。取材の成果は、たぶん春頃にお目にかけられるかと存じます。

それから…これはテレビ番組の話ですが、先日「コズミック・フロント」という番組で米の惑星探査機ボイジャーを取り上げてまして。今も太陽系のふちを飛んでいるボイジャー兄弟。思えば小学生の時、ボイジャーが送ってきた木星のカラー写真に興奮して、学級新聞に貼り付けて三ヶ月ぐらいおいといたことが。
それからもう30年以上経ちますが、今も健在で太陽系の外に向けて順調に飛行していることに胸が熱くなりました。
番組の中で「ボイジャーが50億キロ先の宇宙から地球を撮った写真」が取り上げられていましたが、その地球は今にも消え入りそうな小さな光の点で、その小さな光が私たちの全てだと思うと、心打たれるものがありました。
私たちを取り巻く、大きくて複雑で混沌たる世界も、小さな小さな光点でしかないことが、私たちの存在というものの真実なのだ、と決して悲観的になるのではなく受け止めると、むしろそういう壮大のものの片隅でささやかに光る点の「熱さ」に、ぐっと来ました。
ボイジャー、ありがとう。

というわけで、一見余裕があるように見えますが、仕事のほうは実はケツカッチンのガッチガチです。冗談抜きで頑張らねばなりませんので、次は新刊が出た頃に浮上します。それではまた。

『ほうらいの海翡翠』発売です。

  • 2011/12/27 15:05

ファイル 810-1.jpg

 もうすでに手に入れておられる方もいるかと思いますが、新刊『ほうらいの海翡翠 西原無量のレリック・ファイル』(角川書店)発売しております。
 今回は単行本ソフトカバーという体裁です。カバーイラストは睦月ムンク先生が担当してくださいました。ちょっとユニ●ロの広告モデルにもなれそうな雰囲気で立っている主人公の西原無量が目印です。(ちなみにカバーを外すと、トリミング前の構図が。見ると取材にいった時の土地の雰囲気を思い出すので、味わい深いです)
 内容は、遺跡発掘員を職業とする男子のお話。遺物発掘師(レリック・ディガー)と本書では呼んでいます。
 久しぶりにガチの現代物を書いたな、という感触があります。古代ミステリー風味あり、冒険風味あり…と色々ですが、無量と萌絵の活躍を愉しんでいただけると幸いです。
 また遺跡発掘という業界は、今回初めてで勉強を要しましたが、多少なりと現場の雰囲気が伝わってくれると嬉しいです。
 年末年始のおともに、是非!

 ちなみに画像の端っこにある石は、今回これを書くにあたってゲットした、とある鉱石です。話中にも出てきますので、どこか探してみてくださいね。

『ほうらいの海翡翠』その2

  • 2011/12/29 16:35

さて発売中の新刊ですが、今回は単行本ということで、恒例のあとがきがありません。
ので、ご紹介を兼ねてネタバレにならない程度に雑談などしてみたいと思います。
(まっさらな状態で読みたいという方は、こちらで引きかえしてください)



主人公は、西原無量(さいばらむりょう)という若者で遺跡発掘員。というのは、前回書きました。
構想の段階で「何か特殊技能を持つ男子が主人公」というのと「ちょっと変わった事務所モノ」という二つの柱がありまして。私の守備範囲(歴史関係)なども鑑みつつ、遺跡発掘関係などどうかな、と。
そんなわけで「遺跡発掘員の男子と発掘員の派遣事務所の皆さん」が登場する話となりました。
主人公を中心に話は展開しますが、スーパーヒーロー的な描き方にはあまりしたくなかったので、ヒロインの萌絵や亀石所長を初めとする所員の群像劇のような形を目指してみました。
帯などのあおりでは、どうしてもこう分かり易いので、無量に「天才」という冠がついてますが、あまりそこは意識せずに普通の男子として描いております。(むしろそうでない部分に力を入れて…と思ってました)
プロットを二年くらい前に提出してから、今年に入ってやっと着手できましたが、書き始めてから出るまで丸一年。
夏ぐらいには脱稿していたんですが、単行本は進行がじっくりなので(校閲もみっちり入ります)年末発売に。おかげで発売日が作品内の季節感ともぴったり合ったので、よかったです。
ただ歴史関係はどうしても敷居が高いと感じられる方もおられるので、そこを踏まえ、読みやすさには気を配ったつもりですので、あまり構えずに手にとっていただけるとありがたいです。
意外にアラフォー組(亀石所長、鶴谷さん、美鈴さん)がウケよくて、嬉しいです。
今回は「忍・登場編」でもありましたので、もし続編が書ければ、無量とおじいさんの関係など、内面も掘り下げてみたいです。

2011をふりかえって

  • 2011/12/30 23:25

そのようなわけで、今年もあと一日となりました。
2011年最後の更新になります。
今年はだいぶペースを落として、新作に取り組む一年でした。
ちょっと作品ごとに振り返ってみますね。

■『ほうらいの海翡翠』(角川書店)
今年の仕事の初めがこれでしたので最初に。無事年内に発表できてホッとしています。
遺跡の調査報告書などを積んで、うんうん調べながら書いてましたが、昔から思い入れのある土地が舞台だったこともあって、書くのは楽しかったです。調べるほど発掘や考古学に対する興味が湧きました。無量は「生意気な年下男子」ですが、今の私の「21才」に対する印象がそうさせるのか、何となくかわいくなってしまいました。
初めて行った与那国島や石垣島では、南国の空気に癒されました。私はどちらかというと北の感性だと思っていたのですが、南国の濃い空気は案外、肌に合うとまた実感しました。台風大変でしたが。
海底資源のことなどは、もたもたしていると現実に追いこされそうでしたので、ちょっと頑張りました。
(ちなみに無量のネーミングですが、陸上選手の高瀬無量選手の活躍を箱根駅伝で拝見して「一度聞いたら忘れられないお名前だな」と感動し、いつか拙作の主人公につけさせていただきたいと思っていたのでした…。※もちろん人物造形などはご本人とは全く関わりございません)


■『真皓き残響 仕返換生』(集英社コバルト文庫)
短中編集で、最後の一編だけ書き下ろしでしたが、ちょうど震災の時と重なったこともあり、このテーマを書くのは少ししんどかったです。
でも換生は彼らが背負う最も重い主題であり、真っ向から向き合わねばならない罪でもあるので、ここはしっかり地に足をつけて書こうと思いました。
個人的には、色部さん主役の短編が気に入ってます。
これの発売合わせでサイン会も開きました。まだ世間全体に震災の影響が色濃く残る中、皆さんのお顔が見れて大変心強かったです。ありがとうございました。

■『犠牲獣』(リブレ出版ビーボーイ・ノベルズ)
こちらは三年前に発表したものに加筆と書き下ろしを加えたものです。7月に発売されました。
『犠牲獣』の終わり方は、一種のリドル・ストーリーになるかと思います。賛否もあったと思いますが、そもそもリドル・ストーリーとは、結末を読者任せにするという意味でなく、物語のテーマ性・ドラマ性において、これ以上書く必要がない、という書き手の判断ゆえの「リドル」なのだ、ということを、書いていて理解しました。
また「あえて描かないことで描く」というのを教えられた作品でもあります。
バフラムの感情エネルギーはゼロから一気にMAXまで駆けのぼります。対するサクの感情エネルギーは最初からMAXなのですが、その性質が極から極へと入れ替わる…。そんな気持ちのダイナミズムのようなところも、味わってもらえると嬉しいです。

■「神王の禁域」(『小説be-Boy 8、9月合併号』掲載・リブレ出版)
今年唯一の雑誌掲載でした。アンコール・ワットに行った時に仕入れた神話をベースにしてみました。一度悪辣な主人公というのを描いてみたかったのです。でも思いのほか可愛くなっちゃいました。あと、ナガが存外純真な肉食になっちゃったので、書き終わったらほのぼのしてしまいました。おかしいな…。
いずれ、もうちょっと加筆して一冊に収録できれば、と思います。

他、これから発表を控えている新作を二作ほど手がけました。
冬には発表できるはずでしたが、ちょっとずれこみそうです。
もう少しお待ちください。
こちらも詳細が出次第、お知らせします。

あとはマンガのほう。『イルゲネス』の新シリーズが始まりました。震災の影響で発売が予定より遅くなりましたが、『イルゲネス 偽翼の交響曲』1巻発売中です。フォン達がちょっと大人っぽくなって、登場です。今回の話でパージ・チルドレンのサガというところを描ければいいなと思います。ギャビィちゃんがイチオシです。

こんなところでしょうか。
(長くなったので、続きます)

よいお年を。

  • 2011/12/31 00:27

(続きです)
今年は3月の震災で日本全体が大きく揺さぶられた一年でした。
去年の今頃、今年がこんな一年になるとは誰が思ったことでしょう。「去年の今頃は…」と思うことによって悲しみがひとしおこみあげる今はまだ、たくさんの方々の痛みに対して、私たちがいたわりを忘れてはならない時なのだと思います。いえ、これからも…ですが。
そして、まだ何も終わっていない、という事も忘れずにいたいです。

私の来年は、引き続き新作の発表が続きそうです。
少しずつ自分の世界を広げて、まだ見ぬ荒野を開墾していけたらと思っております。
あれ? 桑原さんってこんなのも書くんだ。
と驚いてももらいたいですし、
やっぱり桑原さんはこれでないとね。
とも言ってもらいたいし。そんな自分は少々欲深いのかもしれません。

この一年も大変お世話になりました。
拙作の挿し絵及び作画を引き受けてくださった先生方、各編集部・出版社及び関係者の皆様、そして、
私の作品を手にとって読んでくださった皆様、待っていてくださった皆様。
ありがとうございました。
来年も、頑張ります。
それでは皆様、どうぞ、よいお年をおむかえください。

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