Diary

2022年12月の日記

2022年を振り返って(その1)

  • 2022/12/31 12:37

2022年も早いもので、今日が最後となりました。
この一年を振り返って、今年の〆とさせていただきます。

小説のほうは、今年は三冊、新刊が発売されました。

単行本『荒野は群青に染まりて 暁闇編』(集英社)
こちらは『青春と読書』にて2019から一年ちょっと連載したものに、加筆修正を加えた作品となりました。
舞台は1945年(昭和20年)から4年間。
主人公は朝鮮半島から引き揚げてきた中学生・群青。引き揚げ船で母が消え、謎の男・赤城や近江兄妹らとともに、焼け野原の東京を生き抜く姿を描きました。終戦直後の東京を、引揚者の視点で描くというのも、独特なものがありました。
群青にとっては見知らぬ祖国。戦災孤児と育む友情や、戦争を引きずる人々がどうやって何もないところから生き抜いていったか、想像して、自分を投げ込んで描きました。
「暁闇編」とあるように続編があります。
今年はそちらを書き上げました。……なかなか難産でしたが、面白い作品になったのではないかと思います。
「相剋編」と銘打って、10年後のお話になります。群青は28歳。赤城も42,3歳。義兄弟の絆、親友との絆、ありあけ石鹸はどうなっていくのか。

来年春あたりに発売されますので、ぜひそちらもお読みいただけると嬉しいです。

『遺跡発掘師は笑わない 榛名山の荒ぶる神』(角川文庫)
『遺跡発掘師は笑わない 榛名山の眠れる神』

無量の新作は、前後編になりました。群馬が舞台でした。
古墳時代の上毛野国と幕末の上州をつなぐストーリーは、チャレンジングでした。私のルーツでもある群馬の歴史を深掘りできて、好奇心も満たされましたし、より愛着が湧きました。
無量にとっては試練をひとつ乗り越えて、成長するきっかけになったのではないかと。さくらとミゲルの意外なコンビは書いていて楽しいです。
忍は相変わらずですが、ひそかに萌絵も成長していて(最近はすっかり笑い担当でしたけど)さくらたちがいることで萌絵が先輩っぽくなってるのも頼もしいです。
このシリーズのメインは、舞台になる土地の地域史です。
いわゆる教科書に載る日本史に留まらず、東アジア史の中での日本という視点を大切にしようと考えております。
巻数を重ねるほど増えていく地域史の豊かさが作品そのものを深く大きくしてくれているようで、書き甲斐を感じます。その土地ならではの遺物、歴史、人々の営み……、そういうものを見いだして、探し出してきて題材とし、料理する作業は最高にエキサイティングです。(大変ですけども……)
担当さんからは「このシリーズはどの巻もカロリーが高い」と言われる通り、情報量も多い作品ですが、読み口は決して重くないので、ガッツリ読みたい方、好奇心を満たしたい方、うんちくはすっとばして無量たちのノリを楽しみたい方、……いろいろな楽しみ方ができるかと。

次回は春あたりになりそうです。
どうぞお楽しみに!

→(長くなったので続きます)

2022年を振り返って(その2)

  • 2022/12/31 13:31

→それから、今年は長年の懸案事項だった『風雲縛魔伝』『シュバルツ・ヘルツ』(集英社)『イルゲネス』(マッグガーデン)がそれぞれようやく電子書籍化できました。
特に『イルゲネス』は小説レーベルではなかったので、マッグガーデンの担当iさんが尽力してくださいまして(電書化作業、大変でしたね。お疲れさまでした)漫画のほうから入った方にも小説のほう読んでもらえるかと。
古い作品を電書化するにあたっては、実は毎回校正が入ります。
その確認作業も地味に労力がいったので、なかなか巻数が多いと大変なのです。その作業もあと少し。
紙の本ではもう古本屋さんでしか手に入らない古い作品が、手軽に手にとってもらえるようになるのは、ありがたいです。(紙の本は新たに刷らないと書店さんにも置いてもらえず、新たな出会いの機会がないので)
電書のよさと紙のよさ、両方の選択ができるのが、一番いいですよね。

そして漫画のほうは浜田先生が描かれる『炎の蜃気楼R』4巻と5巻(秋田書店)が発売されました。
仙台編の新たなキャラクターたちが魅力的!
特に伊達トリオ(政宗、小十郎、成実)が大人の魅力溢れていて素敵すぎ!
思わず「もっと出番を増やしていいですよ~!」とけしかけてしまうほど。
あと国領さんがとても良きですね。浜田先生は若者だけでなく、味のある大人を描かれるのがとても巧みでいらっしゃる。熟年世代や高齢者まで、幅広い世代の魅力的なキャラを描けるのは、さすがだと思います。
第6巻は2月発売です!
カバーはあの方とあの方……お楽しみに!

さて、そろそろ〆に入ります。
今年は年齢ゆえの体調不調に見舞われたりしまして「あ、今まで通りにやってちゃだめだこりゃ」ということを思い知りました。
調子が良くなってもふとした拍子に不調がぶり返すこともあるので、来年は「自分ファースト」をモットーに、周囲の理解も得ながら、無理のないペースで物事を進めていこうと心に決めました。
年齢なりの不調は避けられませんが、精神的にはいろんな焦りやプレッシャー、生きづらさといったものから少しずつ解放されて、もしかして「熟す」というのは、こういうことなのかな、とうっすら感じられるようにも。
人生、失うものがあれば得るものもあり、同じ境地ではいられなくなるからこそ「今」という時間が輝くのであり。
無常は切なくもあり、面白くもあり。
何か大きなことを成さずとも、ひとはただ向こうからやってくる毎日をひたすら生きて生きて、与えられた時間の分だけ、命を全うする。ただそれだけで十分価値があるのだということ。やっとわかってきた気がします。

今朝起きて、夕方まで生きているかもわからない。
運命というのはそういうものだから、いま書いているものが最後の一筆になるという気持ちで向き合っていこうと思います。

来年も桑原水菜作品を何卒よろしくお願いいたします。
皆様、良いお年をお迎えくださいませ。

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