Diary

再始動いたしました。

  • 2025/04/18 00:48

満開の桜が終わり、初々しい葉桜の季節となりました。
若葉のみずみずしさには見ているほうの心も潤うような気がします。

舞台『炎の蜃気楼 昭和編』シリーズBlu-ray BOXにつきまして。
購入された皆様には大変なご心配をおかけいたしましたが、無事に制作が決定し、新たな態勢で再始動する運びとなりました。
(詳しい経緯につきましては 舞台『炎の蜃気楼 昭和編』上演10周年プロジェクト公式サイト をご覧くださいませ)
制作会社が商品の製作途中で倒産、という大変シビアな状況に、知らせを受けた関係者一同衝撃を受けたのが11月。その直後から状況把握に動き、製作続行の可能性の存否もさだかでない中、集英社はじめ関係各社において対応について協議に協議を重ねてまいりました。(そのとき動いてくださった方々は皆「どうすればこの状況下で製作を続け購入者にきちんと届けられるか」をひたすら探ったと聞き及んでおります)

不確定要素も多い中、ただただ司法の判断を待つしかないという時間も長く、購入された方々のご心労を考えると私自身いたたまれない思いでおりましたが、無事に青信号がともり、心から安堵しました。また、この厳しい状況において、舞台にかかわった方々が示してくださった作品への思い入れや心意気にも支えられました。

このたび制作を引き継ぐ形となられた株式会社イーストパーク様には、心より御礼申し上げます。
再始動の第一歩として、先日、特典ブックレットに載せる写真の撮影と対談が集英社の会議室をお借りして行われました。
半年前のあの日、突然の中断に困惑した面々がようやく顔をそろえ、満を持して撮影に挑みました。富田さん演じる加瀬の姿を目にした時は「ようやくここまでこれたか」と胸がいっぱいに。
現場に立ち会ってくださったイーストパークの担当様から「ミラージュはチームなんですね」というお言葉をいただき、私自身も、ミラージュチームの結束力にあらためて感じ入る機会となりました。

製作は着々と進んでいるとのこと。
イーストパーク様から(心苦しくも)制作費の不足分をご負担いただく形となったこともあり、当初の想定通りとはいかない部分も出てくるかもしれませんが、関係者一同、知恵をしぼって力を合わせ、さらに良きものをお届けできるよう尽力いたしております。購入者様におかれましては、商品がお手元に届くまで、いましばらくお待ちいただけますよう、原作者として、あらためてお願い申し上げます。
なお、進捗状況につきましては、イーストパーク様により新たに設置されましたXアカウント(@butai_mirage_g)にてお伝えしていくとのことです。

このような事態となり、非常に残念でしたが、素晴らしい舞台を作ってくださったトライフル様への感謝が変わることはございません。

あらためてご尽力を賜った関係各位に御礼申し上げるとともに、もしかなうならば、乗り越えて培ったこの結束をもって、また新たなものを作り上げる力に変えていけますよう。

約束されたゴールを目指して。

読み切り短編「オフロサマ」公開&陸前高田市立博物館訪問

  • 2025/04/02 20:55

桜の花が一気に咲き始めたと思ったら、この寒さでつぼみもすっかり縮こまってしまったようですね。
おかげで長く楽しめそうで嬉しいです。

さて、集英社オレンジ文庫のWEBサイトに新作が載ります。
オレンジ文庫十周年を記念しまして、「魔法のある日常」をテーマに、読み切り短編を複数の作家でリレーする企画。
第三回目は私めです。タイトルは、

「オフロサマ」(イラスト Shiho先生)

お風呂を守るフロガミさまと老舗銭湯のお話。
軽い読み口の読み切りですので、お風呂に入った時のような気分で、頭を使わずにゆっくり読んでいただければ、と。
ちなみに昭和感溢れる温泉も銭湯も大好きで、
昔ながらのお風呂にはなぜあんなに癒やされるのでしょうか。
そんな問いを自分になげかけながら、書きました。
ぜひ、楽しんでくださいませ。

ここからは近況です。

先日、陸前高田市立博物館を訪れました。
「遺跡発掘師シリーズ」岩手編でお世話になった博物館。
東日本大震災の津波で大きな被害を受けましたが、瓦礫と泥の中から46万点に及ぶ資料をレスキューし、地道な保存処理と修復作業を重ねて、2022年に再建復活しました。開館の知らせを聞いてから、ずっと訪れたかったのですが、このたび、ようやくそれがかないまして、取材でお世話になった熊谷賢主任学芸員とも10年ぶりに再会を果たしました。

当時はまだ(脱塩のため)水槽で水に浸かっていた漁撈具が、すっかりきれいになって展示されている姿を見て、胸が熱くなりました。
本当に素晴らしい博物館。
ふるさとの「たからもの」への愛着と誇り、学芸員さんや関係者の皆さんのたゆまぬ努力と不屈の信念が結晶して、見応えのある展示内容でした。
ちょうど「陸前高田のオシラサマはいま~令和に伝える謎の民間信仰~」という特別展が開催中で、たくさんの素敵なオシラサマたちとも会えました!
ほんとうに親しみ深く、所有者家族とのエピソードがほほえましく、すっかり魅了されました。
見終わった後もあのあったかい空間が大きな玉になって、私の中に残っているような気がします。大好きになりました。
実はその日は物凄い風で、暴風に逆らいながらなんとか博物館にたどりついたような有様でして。その暴風のせいで東北新幹線が止まり、帰れなくなってしまって、もう一泊することになったのですが、そのおかげで閉館までゆっくり楽しむことができました。これもオシラサマからのはからいだったのかしら、と。
熊谷先生、陸前高田市立博物館の皆さん、ありがとうございました。
またぜひ訪れたいです。

(ちなみに今回の読み切り「オフロサマ」ですが、無量のほうのシュラバ中からずっと「オシラサマに会いたい会いたい」と思っていて、やっとシュラバがあけたので日帰り温泉に行き、ほっと一息ついた時にふってきたアイデアでした。頭の中で合体したのかな??)

新刊『遺跡発掘師は笑わない イクパスイの泪』発売日

  • 2025/03/22 07:49

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春分を過ぎ、まだ寒さが残りつつも陽射しはすっかり春ですね。
無事に新刊の発売を迎えることが出来ました。

『遺跡発掘師は笑わない イクパスイの泪』
 装画 睦月ムンク先生/角川文庫

遺跡発掘師シリーズもついに20巻目。節目の一作となりました。
今回の舞台は北海道、道南地方です。
上ノ国にある中世の館の遺跡を調査することになった無量たちは、江差で開陽丸の水中発掘調査に来ていた司波たちと再会。
その司波たちに突然ふりかかった調査中止要請。
一方、無量たちは遺跡で「イクパスイ」というアイヌの祭祀具を発見。
江差の海の沈没船と、無量が掘り当てた「イクパスイ」は思いがけぬ形で繋がっていくことになり……。

元寇船のお話(6、7巻)に出てきた司波と黒木が再登場。
忍の転職先をまだ知らされていない無量と、忍&ソンジュの関係も徐々に動き始め……。萌絵はすっかりたくましくなりました。
戊辰戦争、アイヌ文化、北前船……道南の歴史が絡み合う一作となりました。
個人的に長年の宿題でもあった題材なので、無事書き上げられてよかったです。ぜひ読んでいただきたいです。
睦月先生の装画も、今回は特にスタイリッシュで、かっこいいですね。
アイヌ文様とイクパスイ、美しく描いていただけて感謝です。
どうぞお楽しみに。

 

舞台『炎の蜃気楼 昭和編』Blu-rayBOXにつきまして。

2月に告知されました件に進捗があったと聞き及んでおります。正式なお知らせをいましばらくお待ちください。

 

雪解けとともに春の光。トンネルを抜けて前に進みます。

コミカライズ『炎の蜃気楼R』第10巻(完結)発売&良いお年を。

  • 2024/12/20 08:14

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師走の気忙しさの中、皆さん、体調など崩されてませんでしょうか。
さて、

コミカライズ『炎の蜃気楼R』第10巻
(漫画 浜田翔子先生/秋田書店ボニータコミックス)
発売しました。

仙台編も無事完結しまして。
浜田翔子先生、本当にお疲れ様でした。
四年間、振り返るとあっというまでしたが、私も一読者として毎回ワクワクしながら楽しませていただきました。
本編の序盤ということで、まだ初々しかった高耶たちに再会でき。
目の前で生き生きと躍動する彼らの姿にちょっと目頭が熱くなりました。
高耶と直江のやりとりもまだ序盤の序盤、少しずつ直江への信頼を重ねていく姿がいじらしくもあり。
リブートで髪型がリニューアルした令和の高坂とか、さらに美しくなっていて毎回にやにやしてました。
仙台編で初お目見えのキャラもたくさんで、伊達も最上も最高でした。伊達様が本当に男前で。出るたび、興奮して転がりまわってましたし、特に成実が個人的に好きすぎて(潮とか、アウトドアスタイルが似合うキャラに弱い。しかもスーツ姿や鎧姿まで。眼福でした)「伊達の番外編、まんがでよみたい……」と思いました。もっと見たい……。

23年ぶりのコミカライズ、夢のようでした。
白泉社版のあの続きを描いてくださって、浜田先生ありがとうございました。そして、その場を作ってくださった秋田書店ボニータ編集部様に感謝いたします。皆様ほんとうにお疲れ様でした。

というわけで、今年もあと10日を残すばかりとなりました。
本来ならこの一年の振り返りをするのですが、
この年末年始は年明け〆切の青ざめるようなスケジュールでして。
振り返っている余裕が全くありません。
年が明けて原稿が無事あがり、落ち着きました頃にまた更新しますね。

この一年の桑原作品をお読みいただき、まことにありがとうございました。
来年もぜひおつきあいいただけたら嬉しいです。
皆様、よいお年をお迎えください。

『炎の蜃気楼アンコール』配信開始&『荒野は~』番外第二弾

  • 2024/10/31 22:09

『炎の蜃気楼』本編完結20周年&昭和編開幕10周年記念としまして

『炎の蜃気楼アンコール』(集英社コバルト文庫)

配信開始しました。
電子書籍限定となります。(詳しくはこちら
過去の特典SSや小冊子で発表した作品などをご新規の読者さんも読める形に……、との目的で企画したもので、いわば「拾遺集」です。
SSだけでは淋しかったので、あれもこれもと詰め込んだ結果、なかなかの分量になりました。(その分カオスとなっております)
特に特典や企画モノは面白方向に勢いよく走ってますので、だいぶ温度差がありますが……。
私の小説はもちろん、ほたか乱先生の邂逅編まんがやいのうえさきこ先生のレポート漫画、各先生方のイラストなど、盛りだくさんです。
まったく書き下ろしがないのも心苦しいので、私と昭和編の担当編集エリーさんのとりおろし対談も収録しました。富士山をおりて御殿場あたりまできた感慨(笑)などを話しました。エリーさんありがとう。

セレクションの時もそうなのですが、実はこの手の企画は編集さんがたいへんな労力をかけて成り立つものでして、本当にお疲れ様でした、と。
ただ、これだけ出してもまだ収録されていない作品もあるかと思います。
気がつかれた方は編集部にその作品名をリクエストしてやっていただけると、またの機会があった時に収録される、かもしれません……。

(ちなみに私はもう把握できておりません……。色々ありすぎて)
(桑原水菜公式サイトで読める作品は収録しませんのであしからず)

今回、電子限定としているのは、紙という形は当時小冊子や年間購読などを申し込んでくださった方が「スペシャルな思い出の品」として大事にしてくださっていることもあり、その配慮もあるように伺っております。
(「そっちももってるけどやっぱり紙の本で~」という方もおられるかと思います。ご意見・リクエストはぜひ編集部のほうに)
電子書籍としてはちょっとお高めですが、よければぜひ、読んでみてくださいね。

そして、オレンジ文庫のWEBサイトでは
『荒野は群青に染まりて』番外編第二弾「マムシとりんご」
を配信しております。
後編は11月1日(金)です。
こちらもよろしくお願いいたします。

上映イベントありがとうございました。&最終回

  • 2024/10/04 21:00

9月21、22日に開催されました舞台『炎の蜃気楼 昭和編』上映イベントにご来場いただきました皆さん、ありがとうございました。
2日間で全5作を一挙上映、というなかなかハードなスケジュールで「腰とお尻、大丈夫かしら」とちょっと戦々兢々でしたが、蓋を開けてみれば、あっというま。映画館のふかふかの椅子だったおかげもありますが、多少のお尻の痛さなど吹っ飛ぶ没入感。
私も全5作を通しで観たのは初めてで、舞台「炎の蜃気楼 昭和編」シリーズの全貌が見えた気がしました。

スクリーンでの上映は大画面ならではの迫力があり、音響も素晴らしく、生の舞台を再現するような音圧を体いっぱいに浴び、想像以上の体験でした。
舞台ですと遠くの席では観るのが難しいキャストさんの繊細な表情も、大画面で堪能できるのは映画館の強み。
蘭丸役の林修司さんも「ミラステ(のBlu-ray)は劇場上映向きですね」と仰ってましたが、ほんとうにその通りだと思いました。
久しぶりに集結したキャストの皆さん、トークの内容も懐かしく楽しく、夢のような時間を過ごすことができました。
私も登壇させていただきましたが、散華行を観た後で感極まってしまって、情緒がしっちゃかめっちゃかだったこともあり、よろよろして不作法もあったかと存じます(失礼しました)。
客席の皆さんが目をきらきらさせて耳を傾けてくださっていたのがうれしく。
五作一挙に観たからこそ発見できたことも。
改めて舞台のスタッフやキャストさんは「炎の蜃気楼 昭和編」という同じひとつの世界で(しかも同時進行で)一緒に格闘してくれた仲間であり、その存在は、当時の私にとってどれだけ頼もしかったことか。
大勢の方が、それぞれの立場でプロとして自分の役目を果たすために全力で向き合っているのをひしひしと感じて、自分もプロの作家として持てる限りをつぎ込もうと思い、その一念で「昭和編」という苦しくも険しい最後の山を登り切れたのだと。
それを応援してくださった皆さんも最後まで走ってくれた戦友です。
そんなことを思い出させてくれた上映会、企画してくれたトライフルさんには心から「ありがとう」を捧げたいと思います。

あの二日間で感じたことを書き連ねたら、ここには全然収まらないのですが、環結まで書き続けてきて本当によかった。心からそう思いました。
文才に溢れたわけでもない私のような作家でも、作品と限りなく真摯に向き合ってきたことだけは胸を張れますし、その積み重ねの果てに抱えきれないほどの高揚感と幸福感をいただけて、当時の自分が報われたような思いがしました。
私はひとりじゃなかった。
「炎の蜃気楼」という作品にかかわってきたたくさんの方々がいてくれた。
本当に感謝しかありません。

そして本編のコミカライズ『炎の蜃気楼R』が最終回を迎えます。
浜田翔子先生、四年間40回にわたる連載、大変お疲れ様でした。
原作2~4巻といえば、私もデビューしたてでストーリーテラーとしてもまだまだ未熟だった頃に書いた作品。漫画化するにはさぞご苦労も多かったことと存じます。心身へのご負担も。
レギュラーメンバーにくわえ、仙台編では政宗たちや敵役たちがとにかく魅力的で毎回心躍りました。呪法合戦の壮大さにも! 仙台編ってこんなに面白かったんだ、と!
23年ぶりにコミカライズの続きが読めたのは望外の喜びでした。実現してくださったこと、感謝にたえません。
言わずもがなですが、浜田先生は長きにわたる私の大切な戦友です。
熱い闘いを本当にありがとうございました。

最終刊10巻は12月16日に発売予定です。ぜひ!

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