Diary

単行本『荒野は群青に染まりて 相剋編』本日発売

  • 2023/03/24 10:58

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お久しぶりです。
1月から多忙を極めたためこちらの更新がすっかり滞っておりました。
その仕事がようやく結実しまして本日新刊発売です。

単行本『荒野は群青に染まりて 相剋編』(集英社)

装画は前回に引き続きましてRe°先生です。書き下ろし扉絵もあります。
前回が夜明けで今回は朝焼けのイメージです。素敵。

舞台は昭和三十年代の東京。
進学するため「ありあけ石鹸」を離れた群青は消息不明。
「ありあけ石鹸」は高度経済成長の荒波にもまれ、倒産の危機にあって身売りを余儀なくされた。
赤城は社長から一社員へ。親会社からやってきた経営陣のもとで、苦闘する中、群青に関する「奇妙な手紙」が届く……。

昭和三十年代の製造業を書くのは、なかなかに骨でした。
消費財メーカーの友人の力も借りて書き上げることができました。
企業小説のような一面もある今回の話で、作家としての自分の世界を広げることもできたのではないかと思います。
相剋編のテーマは「群青と赤城の対決」。
上巻にあたる暁闇編から十年、登場人物それぞれが生きてきた時間を背負って、成長や変化した姿を見てもらえると嬉しいです。
ふたりの絆の行方を見届けてください。

そして4月には遺跡発掘師シリーズの新刊も出ます。

4月24日発売 『遺跡発掘師は笑わない 災払鬼の爪』角川文庫

こちらもよろしくお願いします。

2022年を振り返って(その2)

  • 2022/12/31 13:31

→それから、今年は長年の懸案事項だった『風雲縛魔伝』『シュバルツ・ヘルツ』(集英社)『イルゲネス』(マッグガーデン)がそれぞれようやく電子書籍化できました。
特に『イルゲネス』は小説レーベルではなかったので、マッグガーデンの担当iさんが尽力してくださいまして(電書化作業、大変でしたね。お疲れさまでした)漫画のほうから入った方にも小説のほう読んでもらえるかと。
古い作品を電書化するにあたっては、実は毎回校正が入ります。
その確認作業も地味に労力がいったので、なかなか巻数が多いと大変なのです。その作業もあと少し。
紙の本ではもう古本屋さんでしか手に入らない古い作品が、手軽に手にとってもらえるようになるのは、ありがたいです。(紙の本は新たに刷らないと書店さんにも置いてもらえず、新たな出会いの機会がないので)
電書のよさと紙のよさ、両方の選択ができるのが、一番いいですよね。

そして漫画のほうは浜田先生が描かれる『炎の蜃気楼R』4巻と5巻(秋田書店)が発売されました。
仙台編の新たなキャラクターたちが魅力的!
特に伊達トリオ(政宗、小十郎、成実)が大人の魅力溢れていて素敵すぎ!
思わず「もっと出番を増やしていいですよ~!」とけしかけてしまうほど。
あと国領さんがとても良きですね。浜田先生は若者だけでなく、味のある大人を描かれるのがとても巧みでいらっしゃる。熟年世代や高齢者まで、幅広い世代の魅力的なキャラを描けるのは、さすがだと思います。
第6巻は2月発売です!
カバーはあの方とあの方……お楽しみに!

さて、そろそろ〆に入ります。
今年は年齢ゆえの体調不調に見舞われたりしまして「あ、今まで通りにやってちゃだめだこりゃ」ということを思い知りました。
調子が良くなってもふとした拍子に不調がぶり返すこともあるので、来年は「自分ファースト」をモットーに、周囲の理解も得ながら、無理のないペースで物事を進めていこうと心に決めました。
年齢なりの不調は避けられませんが、精神的にはいろんな焦りやプレッシャー、生きづらさといったものから少しずつ解放されて、もしかして「熟す」というのは、こういうことなのかな、とうっすら感じられるようにも。
人生、失うものがあれば得るものもあり、同じ境地ではいられなくなるからこそ「今」という時間が輝くのであり。
無常は切なくもあり、面白くもあり。
何か大きなことを成さずとも、ひとはただ向こうからやってくる毎日をひたすら生きて生きて、与えられた時間の分だけ、命を全うする。ただそれだけで十分価値があるのだということ。やっとわかってきた気がします。

今朝起きて、夕方まで生きているかもわからない。
運命というのはそういうものだから、いま書いているものが最後の一筆になるという気持ちで向き合っていこうと思います。

来年も桑原水菜作品を何卒よろしくお願いいたします。
皆様、良いお年をお迎えくださいませ。

2022年を振り返って(その1)

  • 2022/12/31 12:37

2022年も早いもので、今日が最後となりました。
この一年を振り返って、今年の〆とさせていただきます。

小説のほうは、今年は三冊、新刊が発売されました。

単行本『荒野は群青に染まりて 暁闇編』(集英社)
こちらは『青春と読書』にて2019から一年ちょっと連載したものに、加筆修正を加えた作品となりました。
舞台は1945年(昭和20年)から4年間。
主人公は朝鮮半島から引き揚げてきた中学生・群青。引き揚げ船で母が消え、謎の男・赤城や近江兄妹らとともに、焼け野原の東京を生き抜く姿を描きました。終戦直後の東京を、引揚者の視点で描くというのも、独特なものがありました。
群青にとっては見知らぬ祖国。戦災孤児と育む友情や、戦争を引きずる人々がどうやって何もないところから生き抜いていったか、想像して、自分を投げ込んで描きました。
「暁闇編」とあるように続編があります。
今年はそちらを書き上げました。……なかなか難産でしたが、面白い作品になったのではないかと思います。
「相剋編」と銘打って、10年後のお話になります。群青は28歳。赤城も42,3歳。義兄弟の絆、親友との絆、ありあけ石鹸はどうなっていくのか。

来年春あたりに発売されますので、ぜひそちらもお読みいただけると嬉しいです。

『遺跡発掘師は笑わない 榛名山の荒ぶる神』(角川文庫)
『遺跡発掘師は笑わない 榛名山の眠れる神』

無量の新作は、前後編になりました。群馬が舞台でした。
古墳時代の上毛野国と幕末の上州をつなぐストーリーは、チャレンジングでした。私のルーツでもある群馬の歴史を深掘りできて、好奇心も満たされましたし、より愛着が湧きました。
無量にとっては試練をひとつ乗り越えて、成長するきっかけになったのではないかと。さくらとミゲルの意外なコンビは書いていて楽しいです。
忍は相変わらずですが、ひそかに萌絵も成長していて(最近はすっかり笑い担当でしたけど)さくらたちがいることで萌絵が先輩っぽくなってるのも頼もしいです。
このシリーズのメインは、舞台になる土地の地域史です。
いわゆる教科書に載る日本史に留まらず、東アジア史の中での日本という視点を大切にしようと考えております。
巻数を重ねるほど増えていく地域史の豊かさが作品そのものを深く大きくしてくれているようで、書き甲斐を感じます。その土地ならではの遺物、歴史、人々の営み……、そういうものを見いだして、探し出してきて題材とし、料理する作業は最高にエキサイティングです。(大変ですけども……)
担当さんからは「このシリーズはどの巻もカロリーが高い」と言われる通り、情報量も多い作品ですが、読み口は決して重くないので、ガッツリ読みたい方、好奇心を満たしたい方、うんちくはすっとばして無量たちのノリを楽しみたい方、……いろいろな楽しみ方ができるかと。

次回は春あたりになりそうです。
どうぞお楽しみに!

→(長くなったので続きます)

炎の蜃気楼Rコミックス5巻発売中

  • 2022/09/28 05:05

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お知らせがすっかり遅くなってしまいました!

『炎の蜃気楼R(リブート)』第5巻、発売しております!
(作画 浜田翔子先生)秋田書店ボニータコミックス

早くも第五巻!
仙台編その2でございます。
伊達政宗をはじめ国領さんや高坂も登場。
新キャラも増えて、ますます賑やかになってまいりました。
浜田先生の手がける仙台編、私も毎回ワクワクしてます。政宗がとにかく、ヤバい。黒シャツベストで登場した時のヤバさときたら。
個人的イチオシは成実ですが、今回は「謎の女」に心つかまれました。
それと綾子ねーさんの血圧が心配です。笑
ねーさん、がんばれ。

連載ではネーム確認などさせていただくのですが、浜田先生のお仕事を拝見するたび、毎回毎回さすがだなあ、と感服してます。
漫画も小説も、読者さんに「読んでる」ことを意識させないように読ませる、というのはなかなか希有な技術だと思っているのですが、浜田先生の漫画もまったくノンストレスで読めるのがすごい。映像を見ているように読める。そこで何が起きているのか、読み手を変に立ち止まらせることなく伝わって、流れるように読める。どこを描いてどこを描かないかの取捨選択も絶妙だなと。
すごいことをされてるのにすごいと思わせないところが、すごい。
熟練の技とはこういうことをいうんだな、と毎回脱帽してます。
積み重ねてきた経験と磨かれ続けた技、そんな浜田先生にコミカライズしていただけること、本当にありがたく思っております。

今回は巻末に、雑誌に掲載された浜田先生との対談の続きが載ってます。
それと複製原画プレゼントもございますので(ご希望のページを複製して、著者のサインが入ります)ぜひぜひご応募くださいませ。
そして連載のほうは、来月はいよいよ直江登場。
この私が久しぶりに直江にときめいてしまったくらいヤバいので、要チェックのほどよろしくお願いします。楽しみにしていてください。

新刊、本日発売日

  • 2022/08/24 21:51

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新刊『遺跡発掘師は笑わない 榛名山の眠れる神』角川文庫
(装画 睦月ムンク先生)
本日発売しました!


群馬・榛名山編の後編です。
発掘現場で出土した「徳川埋蔵金」らしき千両箱から始まる事件。
忍と萌絵が不在の中、〈鬼の手〉を失った無量は九鈴鏡を探し出せるのか。
謎の集団・強心隊の正体とは?

大変お待たせしました。今回は前後編になりまして、その分、しっかりお話のほうも深掘りできたのではないかと思います。
元走り屋たちの発掘会社・棟方組の面々が個性豊かなので、書いてて楽しかったです。遺跡発掘&スピードの世界という異色の取り合わせになりました。
あと群馬県は私の半分ルーツの土地でもあり、なじみのある土地の、知らなかった歴史をたくさん発見できたことも、書いていてワクワクしました。
親戚をモデルにした登場人物なんかもいます(叔父さんありがとう)。
物語としても、無量の〈鬼の手〉が消失してしまうという、大変な局面での無量や萌絵たちの心の動きが読みどころでもあります。
間二ヶ月というスケジュールの執筆は、なかなか痺れましたが、書き切れてよかった。

睦月先生の手がけたカバーイラストは、前後編で一枚絵になる仕様です。
後編のメインはアンニュイな忍ちゃん。相変わらずスマホが似合う男。単巻でカバーに無量がいないのは初めてですね。
ミゲルとさくらがカバー初登場、かわいいとオラオラのいいコンビ。
ご購入いただけましたら、ぜひ二冊並べてお楽しみください。

未読の方も、いまなら一気読みできますので、ぜひ前後編合わせてお手にとってみてくださいませ。(前編は重版いただきました)

地元の紀伊國屋書店前橋店様ではサイン本も扱ってくださってます。
前編に引き続き、素敵なディスプレー、ありがとうございます!
お近くの方はぜひ足を運んでみてくださいね。

仕事が一息ついたら、伊香保温泉につかりにいきたいです!

夏はきぬ。

  • 2022/07/22 01:17

六月末の猛烈な暑さで「今年はどうなっちゃうの?」と心配でしたが、
その後、梅雨戻りで涼しくなったりして、ちょっとほっとしました。
(というかまだ明けてなかったんじゃないかな)
セミも鳴き始め、ようやく夏本番になりそうですね。

【今後の予定】
8月24日発売 『遺跡発掘師は笑わない 榛名山の眠れる神』
         装画 睦月ムンク先生 角川文庫

無量の群馬編、下巻は予定通り、来月発売できそうです。
睦月先生のイラストも拝見しました。とても素敵!
上下巻で一枚のイラストになる仕様ですので、お楽しみに!
久しぶりに隔月刊行となります。
なかなかにタイトでしたが、なんとかやり遂げられてほっとしてます。
そして、先月からは

『シュバルツ・ヘルツ―黒い心臓―』シリーズ(コバルト文庫)
の電子書籍化も始まっています。


只今、第4巻『シヴァの踊る森』までと『シュバルツ・ヘルツ ゲスタァン』まで配信完了しました。
黒い心臓を移植された少年と「地図にない国」からやってきた者たちが織りなすサスペンス・ファンタジーです。
ちょこちょこ読み返していますが、アクションシーンの描写とか我ながら感心してしまいます。映画を見ているような「視覚に訴える文章」が冴えてます。
未読の方も既読の方も、ぜひ!

ようやく大きい仕事が一段落しましたので、そろそろ仕事とは関係ない一人旅とかしてみたくなりました。
奈良にいって毎日仏像を見倒したいけど、この暑さなのでもう少し先かな。
皆さんもどうぞお体にはくれぐれもきをつけて。

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