Diary

2012を振り返って。その2

  • 2012/12/31 02:07

(続きです)

■『箱根たんでむ 駕籠かきゼンワビ疾駆帖』 2012.9/集英社文庫
 江戸時代の箱根が舞台の時代物でした。時代物というと、なかなか敷居が高いというか、読み慣れた方でないと入りずらいと感じられる方もおられるかと思いますが、普段読み慣れない方にも構えずに読んでもらえるものを、と短編連作という形にしました(実際、読みやすく仕上がっていると思います)。
 十代の頃に読んだ史村翔先生&新谷かおる先生の『ファントム無頼』という複座式戦闘機のバディものが大好きで、そういう感じを時代物でやってみたい、という思いがありました。あんなにかっこよくはないですが。
 ゼンワビのわいわいとした日常は、書いていて楽しかったです。

■『炎の蜃気楼邂逅編 真皓き残響 蘭陵魔王』 2012.11/集英社コバルト文庫
 景虎の二度目の換生という大きな節目を迎えまして、クライマックス後編でした。もともと邂逅編を書くとしたら、ここまでと決めてあったので、無事ゴールにたどり着けてよかったです。
 邂逅編もあと一冊になりますが、よければ最後までおつきあいくざい。

■『出雲王のみささぎ 西原無量のレリック・ファイル』 2012.12/角川書店
 先日出たばかりですが、今回はややミステリー要素が高めです。
 単純に犯人探しのようなものではなく、考古学に携わるひとたちの人間模様が書ければいいなあ、と思っていたので、今回はよりその部分を描き入れることができたのではないかと思います。
 どうしても専門的なところを描くと敷居が高くなりがちな題材なので(ひとつひとつの要素の背景が深いので)その分、会話おおめで読みやすく…など、匙加減には毎回苦労しています。
 既刊を未読の方も、こちらから読めるような仕様になってますので、構えることなく是非。
 ちなみに無量は、来年、某所で連載が始まる予定です。
 そちらもよろしくお願いします。

そして、こちらは漫画原作のほうになりますが、
■『イルゲネス 偽翼の交響曲』 マッグガーデン
 ただいま連載中ですが、今回の話は、原作に登場しない新キャラたちとフォンの関係が柱になります。彼らとのやりとりの中で、フォンは自分に科せられた宿命をつきつけられていきます。後出者システムは大きな縦糸でもあるので、そこをドラマティックに描ければと思います。カチル先生、頑張って!

以上です。
私事になりますが、三年前に父が亡くなった後、しばらく気力的に底をついた感じになってしまい、モチベーションを保つのがきつかった時期があったのですが、ここ一、二年で少しずつ持ち直してきた感じです。
来年も地に足をつけて、できればじっくりと、執筆に取り組んでいきたいと思っています。
20年続けても小説はやはり難しいですし、万人に受け入れてもらえるようなものを書くのは更に困難と感じています。たくさんの人に読んでもらうことは商業小説家の命題ですが、これは私にしか書けないと思うものを見つけるのは、それ以上に大きな命題です。
そのためにもしっかりと土台をつくって、そういうものを描けるよう、自分を磨いていこうと思います。
今年もおつきあいいただいた皆さん、ありがとうございました。
来年もまた、書店さんでお会いできれば嬉しいです。
よいお年をお迎えください。

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