
文庫版『荒野は群青に染まりて 相剋編』発売
- 2025/09/18 23:11
『荒野は群青に染まりて 相剋編』(装画 Re°先生)
集英社オレンジ文庫
本日発売しました。
『荒野は群青に染まりて』シリーズ、3ヶ月連続刊行の第2弾です。
暁闇編のラストから9年後、昭和34年から物語は始まります。
倒産の危機に遭い、大手企業の子会社となってしまったありあけ石鹸。
社長だった赤城は一社員となり「市場調査部」に配属されています。
新経営陣と新旧社員たちの軋轢の中で、苦しむ赤城。
群青はいまだに行方不明のままでしたが、思わぬ形で再会することに……。
単行本の時にも書いたかもしれませんが、相剋編からうってかわって企業小説の様相に。
もともと集団内の派閥や力関係などを描きたいと思っていたので、群像劇的になったかと。企画を起ち上げた時の担当さんは、かつてミラージュで赤鯨衆を描いた時の「集団の群像劇」な面を気に入ってくれたようで、そういう群像劇を今度は会社を舞台に描いてみないか、と提案してくれたのがはじまりでした。
今回の相剋編では、そういうものが描けたのではと思います。
巻末には文芸評論家の細谷正充様の解説を掲載しております。
とても読み応えがあり、私の執筆歴に加え、書き手の意図もしっかり汲み取っていただけた上に、昭和三十年代の企業小説にまで触れられていて感銘を受けました。
細谷様、ありがとうございます。
以前、時代小説アンソロジーで「箱根たんでむ」をチョイスしてくださったご縁もあり、この度解説をご寄稿いただけたこと大変嬉しく。
この場を借りて、心より御礼申し上げます。
9年後の登場人物たち、それぞれの変化が書き甲斐ありましたが、特にリョウが楽しかった。リョウは楽しかったなあ(二度言いました)
もしかしたら私自身にとても近い人かも、とも感じました。
(あんなにかっこよくはないですが)
高度経済成長期はいいところだけではない、とんでもない時代だったと思いますし、小説でも触れたようにルール整備が社会の変化のスピードにまだまだ追いついていなかったために無茶や無法もまかり通っていたのではないかと。「猛烈」な時代の中で生き抜く人々の図太さ・しぶとさ、その裏での苦しみ悲しみ喜び、この時代に凝縮されたドラマティックなものたちが私を呼んでやまないのかもしれません。
昭和2、30年代の人々の口調が好きです。
なんだか、しっくりくる。
ちょっとすかした感じの言い回しとか、独特の時代感のある話し方。
書いていて落ち着くし、すごく好きです。
さて、第三弾は番外編になります。サブタイトルは「―赤と青―」。
本編では書けなかったホームドラマ的なものが書けました。
10月17日頃発売予定です。
ご予約をしていただくと確実に発売日に入手できるかと存じます。
よろしくお願いいたします!