Diary

一人芝居『憑』閉幕

  • 2025/10/27 00:46

俳優・富田翔さんの一人芝居『憑』が10月17~19日恵比寿のエコー劇場で上演されました。
私は原案を担当いたしました。
あれは7月下旬でしたか。舞台ミラージュで景虎を演じた富田さんから、一人芝居の企画を練っているとのことで「お知恵を拝借したい」とご相談いただいたのが事の起こり。「芝居中に書を書きたい」と真っ先に仰っていたのでそれを叶えるモチーフ(原案)をご提案させていただきました。
「1文字の書で死者を成仏させる話」。
とても気に入ってくださってその場でタイトルも決まり、演出の田邊俊喜さんからもすでにその場で「ブラックライトを使った演出」のアイデアが飛び出してきたりして大変エキサイティングでした。

往生文字という発想の源は真言密教の「仏の種子(しゅじ)」(毘沙門天でいうところの「バイ」←梵字の頭文字)。
その1文字で、その仏の全てや本質を表すとされる文字です。
これを「人間の一生」を表すものとして表現してみてはどうだろう、と。
翌日、そのアイデアとオチに至るまでのざっくりした構成を簡単にまとめたものを提出して私の仕事はおわり。

個々のエピソードをはじめ、あの見事なストーリーラインはすべて脚本担当のほさかようさんが考えてくださったものです。(原案で決まってたのは「〆切に追われる男」とオチ。私が書いた台詞も「文字をくれ、文字をくれ、私を浮かばす文字をくれ」だけ)

ですので、プロットをいただいた時はびっくりしました。まさかガッツリ小説家が主人公の話になるとは…! しかも偽物本物というテーマ。「おお!これくるかぁ!」と興奮しました。
私には大変馴染み深いテーマ。
(全然関係ないんですが、あのエコー劇場の建物にあるスタジオ。赤の神紋のドラマCDのオーディションをやった場所でした)

原案は原作ではないので、そのあとはもう製作が進んでいくのをオブザーバーのように見守っておりました。(最終稽古は拝見しました)
私が差し出した小さい種が、あんなに素晴らしい舞台になって目の前に出現したことが本当に凄くて、富田さんと田邊さんをはじめとするスタッフの皆さんの創造力に感銘を受けました。
劇中、原稿用紙を抱きしめていた紫村の姿が、懐かしくて切なくて…。
(どういう懐かしさかというと、ドラマ新説三億円事件で山崎努さん演じる中年男が織田裕二さん演じる青年をみて「あの海でまたおまえが懐かしくなった」という類いの)
舞台を観ながらいつしか自分自身の来し方を振り返っていました。

終わってから思ったのですが、あの一人芝居の源流には富田さんご自身のファミリーヒストリーがあったかと。
偉大な書家であるお祖父様、その名を抱いて同じ道を歩み、繋げ、拓き続けておられるお母様、そして富田さんへ。三代にわたり綿々と受け継がれていく「書」くことへの想いが「演劇」を得て、そこにあるように感じました。
(往生文字の着想には以前お招きいただいた一門展からのインスパイアがきっとあったかと)

田邊さんも仰ってましたが、この素晴らしい舞台を作り上げたひとたちを、繋げたのは、まさに「仏縁」。
私もそう感じましたし、その縁を引き寄せたのは、表現にたずさわるひとたちの熱い意志だったように思えます。

ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。
アフタートークでは盛大な出とちりをかましてしまいましたが(大変失礼いたしました!)「あの千秋楽のすごい空気の中でトークってどうやればいいの……」と震えていたので、おふたかたとお客様方が和やかな空気にしてくださってほっとしました。

千秋楽公演は現在アーカイブ配信中(11月3日まで)。

カンフェティにて配信チケットが購入できますので、劇場に来られなかった方々、気になってる方々もぜひご覧くださいませ。


演劇は本当に非日常の祝祭空間ですね。
ありがとうございました。

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