Diary

2025年の日記

『荒野は群青に染まりて -赤と青-』発売

  • 2025/10/20 20:56

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立て続けのイベントで更新が遅くなってしまいました!
10月の新刊は無事発売しました。

『荒野は群青に染まりて -赤と青-』
(装画 Re°先生)

 集英社オレンジ文庫

三ヶ月連続刊行の最後を締めくくる番外編です。
Re°先生描き下ろしのカバーイラストも、赤と青の義兄弟。当初、編集部からは「背中合わせなどどうでしょう」と提案していたのですが、Re°先生がお話を読んだところ、ふたりが向き合っている構図が思い浮かんだので」と仰ってくださって、ならば、とこの形にしていただきました。
赤城はことあるごとに群青の髪をわしゃわしゃかきまぜてましたよね。

暁闇編にあたる昭和21~23年のお話。
まだバラック暮らしをしていた頃の物語が二編、さらに群青の高校時代のお話を二編書き下ろしました。

【焼け跡のひなまつり】
佳世子が闇市でもらった女雛。群青たちは失われた男雛の代わりを探そうとするが。
【マムシとりんご】
戦災孤児グループのボスが上野に戻ってきた! 群青とリョウはトラブルに巻き込まれることに。
【B.B.B ~ブルー・ブラザーズ・ブギ】
思春期に入った佳世子はやけに群青への当たりがきつく、赤城が理由を聞き出そうとするが。
【アカマツの聳える丘で】
東海林は帝銀事件の犯人……!? ふってわいた騒ぎに赤城と群青は?


オレンジ文庫のWEBサイトにインタビューが載っていますので、ぜひお読みください。但し、盛大なネタバレがありますので、できれば本編を読み終えてから読むことをおすすめします。(自己責任で……)

番外編はありあけファミリーのホームドラマとなりました。
企業ものも初めてならホームドラマを書くのも初めてです。
初めてづくしの「荒野は~」シリーズでした。
この時代は書くのも簡単ではありませんでしたが、書き終えてみると、この世界にずっといたいくらいに楽しかった。赤城と群青の義兄弟が大好きでした。兄貴肌で皆に信頼され強いリーダーシップで仲間を引っ張る赤城、誰よりも赤城のような男になりたいと願いつつも相反する複雑な気持ちをもてあましてしまう群青。血の繋がらない他人同士が兄と弟になっていく、その関係性はもどかしいこともありましたが、心の底で固く繋がっていて、少しうらやましくさえありました。特に相剋編の赤城の弱さや群青の葛藤、からの共闘は筆が躍りました。
リョウも大好きでした。ある意味、今まで書いてきた人物造形の中で私が一番「素の自分」で書いたと思えた。いつか書いてみたかった。書けて良かった。
近江と佳世子の素顔を描けたおかげで、私の中のありあけファミリーの結束も深まった気がします。
どのキャラも大好きでした。あの黒田専務でさえ!
書けば書くほどドラマの種が詰まっていて凄い時代でした。
機会があればまた、この時代を書いてみたい。

三冊揃いましたので、ぜひこの機会にお手に取ってみてください。
待たずに一気読みできます。
そして感想をぜひ教えてもらえると嬉しいです。
ご愛読ありがとうございました。

トークショー「新井素子と桑原水菜が誘う『コバルト』の世界」

  • 2025/10/24 21:26

先日、読売本社ビルにて行われました、よみうりカルチャー主催
トークショー「新井素子と桑原水菜が誘(いざな)う『コバルト』の世界」
ご来場の皆様&配信視聴された皆様、ありがとうございました。
久しぶりに読者の皆様と直接お目にかかれて、とても嬉しかったです。

今回は新井素子先生との登壇とのことで!
素子先生がコバルトで出された御本はどれも、中学時代に夢中で読んだ作品であり、私がコバルト文庫という少女小説レーベルを知ったきっかけでもありました。
とても緊張しましたが、素子先生は気さくで明るくて優しくて、懐の深い方でした。素子先生の「星へ行く船」シリーズのお話や80年代のレジェンド作家の皆様とのお話は興味深く、レーベルの歴史を知るという意味でも大変貴重な機会でした。
驚いたのは、どうやら素子先生と私の創作方法は似ているかも、ということ。ぬいぐるみ遊びが小説に繋がっているという共通点が見つかり、めちゃめちゃ嬉しかったですし、自信がみなぎりました。
私の大好きな「一郎さん」のお話も(『・・・・・絶句』をぜひおすすめします)「一郎さん」の黒服が直江の源流であるという気づきも得て、震えました。
しかも遺跡発掘師シリーズを読んでくださっていたと聞き、ひいいっ!と。光栄です!
あれもこれもと思いは尽きないのですが、作家としての私の源流でもある素子先生とじかに色んなお話が出来たことで初心に立ち返ることもできました。この企画をお受けして心の底からよかった!と思いました。
素子先生、ありがとうございました!

ミラージュの話は「初期」を中心に。
ちょっと補足を加えなければ。「高耶と直江のモデルにしたような人はいますか」というような質問で、「高耶は私」と発言しましたが、あれはモニターのカバーイラストの高耶を見ていたら浮かんできた言葉なのでした。
まあ、35年のつきあいで、あの長大な小説のど真ん中にいたキャラは自分の投影というよりも自分の一部……いや一部というより私自身が「一番長く潜ったキャラ」ですから、一部というより一心同体? 私はキャラが憑依するというより、キャラに潜るタイプなので。それは直江も一緒で。(その一方で俯瞰して突き放す)
そういう意味の「私」でしたことを付け加えたく。(あの発言で、ミラージュが私の夢小説だったかのような印象を与えてしまったのでは、と後から心配になってしまいまして。そういうことではありませんので)

思い返せば、高耶のイメージには織田裕二さんとか尾崎豊さんとか、不遜で少し屈折した若者像があったので、そちらを答えればよかったのか……。
(トークって立ち止まって推敲できないからむずかしいですね)
ただ表現の主体として自分の世界を「少年」に託したほうが投影しやすいということがあったのは確かです。

懐かしいお話をたくさんできて、楽しいひとときでした。
司会進行の嵯峨景子さんは少女小説&コバルト研究の第一人者で、非常に知識豊かでよどみなく、お話も巧みで熱量高く、絶妙なフォローもあり、トークが苦手な私でも楽しくお話させていただきました。
嵯峨さんが旗振り役となって「あの頃のコバルト」の魅力を発信し続けてくださっていることは少女小説の再評価にも繋がっていると思いますし、何より嵯峨さんの熱く貪欲な姿勢に刺激を受けました。
嵯峨さん、本当にありがとうございました!

そして、この企画を起ち上げた大宅壮一文庫の皆様。
当日は大宅壮一文庫から雑誌Cobaltのミニ展示もされていて、どれもこれも懐かしく。しかもこの日のために私が1993年に出したミラージュの同人誌までゲットしてきてくださったとのことで……!(並んで展示されてました)その心意気にグッときました。
大宅壮一文庫さんでは現在、コバルト50周年企画としまして雑誌Cobalt全号展示企画を開催中(~11月15日まで)
創刊号から雑誌Cobaltをすべて閲覧できるという大変貴重な企画です。
雑誌Cobaltで青春時代を過ごされた方、ぜひぜひ足を運んでみてくださいませ。見逃した号や雑誌にしか載らなかった挿絵、様々な企画などなど、一日いても足りないかも。有料ですがコピーも取ってもらえるそうです。
私も折を見て訪問したいと思います。
大宅文庫の皆様、ありがとうございました!

トーク終了後はサイン会も。皆さんが持ってきてくださった本、35年ものの1巻から最新の「荒野は~」まで、ミラステのBlu-rayBOXブックレットやイラスト集、遺跡発掘師シリーズ……僭越ながら、自分の歴史を感じました。明らかにコバルト世代ではないであろう20代の受講者さんもいらして幅広さを感じました。
会場の熱気もすごくて、往年の「おちゃべりパーティー」を思い出しましたよ。
嵯峨さんがトーク中にちらっとふってくれた「35周年に何かやりませんか」。実現できるかどうか、いま編集部などで探ってくださっているようなので、もし何か動きがあったら、そのときはお知らせしますね。

実は当日、会場には若木未生先生も駆けつけてくださっていまして。ともに90年代を盛り上げた戦友であり、永遠のライバル。久しぶりに会えて嬉しかったし、激励も嬉しかった。
若木さんありがとう、グラスハートのドラマ化もおめでとう。これからもお互い頑張って書いていこうね。

35周年を前にこれほど初心にかえる機会はありませんでした。
素晴らしい時間でした。
皆さん本当にありがとうございました!

一人芝居『憑』閉幕

  • 2025/10/27 00:46

俳優・富田翔さんの一人芝居『憑』が10月17~19日恵比寿のエコー劇場で上演されました。
私は原案を担当いたしました。
あれは7月下旬でしたか。舞台ミラージュで景虎を演じた富田さんから、一人芝居の企画を練っているとのことで「お知恵を拝借したい」とご相談いただいたのが事の起こり。「芝居中に書を書きたい」と真っ先に仰っていたのでそれを叶えるモチーフ(原案)をご提案させていただきました。
「1文字の書で死者を成仏させる話」。
とても気に入ってくださってその場でタイトルも決まり、演出の田邊俊喜さんからもすでにその場で「ブラックライトを使った演出」のアイデアが飛び出してきたりして大変エキサイティングでした。

往生文字という発想の源は真言密教の「仏の種子(しゅじ)」(毘沙門天でいうところの「バイ」←梵字の頭文字)。
その1文字で、その仏の全てや本質を表すとされる文字です。
これを「人間の一生」を表すものとして表現してみてはどうだろう、と。
翌日、そのアイデアとオチに至るまでのざっくりした構成を簡単にまとめたものを提出して私の仕事はおわり。

個々のエピソードをはじめ、あの見事なストーリーラインはすべて脚本担当のほさかようさんが考えてくださったものです。(原案で決まってたのは「〆切に追われる男」とオチ。私が書いた台詞も「文字をくれ、文字をくれ、私を浮かばす文字をくれ」だけ)

ですので、プロットをいただいた時はびっくりしました。まさかガッツリ小説家が主人公の話になるとは…! しかも偽物本物というテーマ。「おお!これくるかぁ!」と興奮しました。
私には大変馴染み深いテーマ。
(全然関係ないんですが、あのエコー劇場の建物にあるスタジオ。赤の神紋のドラマCDのオーディションをやった場所でした)

原案は原作ではないので、そのあとはもう製作が進んでいくのをオブザーバーのように見守っておりました。(最終稽古は拝見しました)
私が差し出した小さい種が、あんなに素晴らしい舞台になって目の前に出現したことが本当に凄くて、富田さんと田邊さんをはじめとするスタッフの皆さんの創造力に感銘を受けました。
劇中、原稿用紙を抱きしめていた紫村の姿が、懐かしくて切なくて…。
(どういう懐かしさかというと、ドラマ新説三億円事件で山崎努さん演じる中年男が織田裕二さん演じる青年をみて「あの海でまたおまえが懐かしくなった」という類いの)
舞台を観ながらいつしか自分自身の来し方を振り返っていました。

終わってから思ったのですが、あの一人芝居の源流には富田さんご自身のファミリーヒストリーがあったかと。
偉大な書家であるお祖父様、その名を抱いて同じ道を歩み、繋げ、拓き続けておられるお母様、そして富田さんへ。三代にわたり綿々と受け継がれていく「書」くことへの想いが「演劇」を得て、そこにあるように感じました。
(往生文字の着想には以前お招きいただいた一門展からのインスパイアがきっとあったかと)

田邊さんも仰ってましたが、この素晴らしい舞台を作り上げたひとたちを、繋げたのは、まさに「仏縁」。
私もそう感じましたし、その縁を引き寄せたのは、表現にたずさわるひとたちの熱い意志だったように思えます。

ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。
アフタートークでは盛大な出とちりをかましてしまいましたが(大変失礼いたしました!)「あの千秋楽のすごい空気の中でトークってどうやればいいの……」と震えていたので、おふたかたとお客様方が和やかな空気にしてくださってほっとしました。

千秋楽公演は現在アーカイブ配信中(11月3日まで)。

カンフェティにて配信チケットが購入できますので、劇場に来られなかった方々、気になってる方々もぜひご覧くださいませ。


演劇は本当に非日常の祝祭空間ですね。
ありがとうございました。

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