Diary

2020年を振り返りまして(1)

  • 2020/12/31 13:04

というわけで2020年も残すところあと数時間となりました。
今年はどなた様にとっても大変な一年でしたね。
まさかこうもマスクが手放せない世の中になろうとは。
私のような元から在宅という仕事のものにとってさえ精神的にきつい時間でした。取材に行けずに急遽内容が変わったりもしましたし。

そんな中、今年は『青春と読書』さんで「荒野は群青に染まりて」の連載がありました。
月刊連載というのは『sari-sari』さん以来でしかも今回は出版社の情報誌という場所。毎回30枚ほどでしたが著者校正も含めて次から次へと続けて書くのはなかなか気忙しく(しかも文庫書き下ろしも並行していたので)
筋力を鍛えられたなと。
終戦直後、大陸から引き揚げてきた少年が、未知の土地で…しかも焼け野原の東京で生きていく姿を描く中で、不思議と私自身、内なる力が湧いてくるのを感じました。
いろんな資料をみて頭の中で当時の様子を生み出すのですが、まだまだ及ばない。本当はこんなもんじゃない、もっとシビアで容赦ない物事がたくさんあったはず、と自分の尻を叩き、五感を研ぎ澄まし、想像し―。
群青と赤城の疑似兄弟感は共に生き残るための絆に端を発し、強い関係が育まれていく過程に何かひとの根と根が繋がるために必要なものが見えた気がします。
目新しいもの、時代の気分をすくいとったもの……そういうものがたくさん世の中を賑わせますが、今の私はそういうものよりも根っこのほうに関心があるようです。
その姿勢は『遺跡発掘師は笑わない』のほうにも現れていたと思います。
人間の根、世の中の根、時代の根、歴史の根。
地味かもしれないけれど、ドラマを生むのは、その根の強さかもしれません。

そのかたわら、『炎の蜃気楼』シリーズ30周年ということで各方面で盛り上げていただきました。
アニメのBD-BOX発売(アニプレックス)コミカライズ『炎の蜃気楼R』(秋田書店)『炎の蜃気楼セレクション』(集英社)……オンラインくじ(プリズムチャンス)まで!
私はセレクションの短編連作を書く他は、対談や監修として関わりました。
関さん&速水さんとのトークイベントも楽しかったですし、よい思い出になりました。
すでに完結した作品にこうやって企画本ができたり、コミカライズ企画が始まったりできるのは、本当にありがたいことです。
長くミラージュを愛してくださった皆さんへの感謝が伝わっていたら嬉しいです。

今年はコミカライズは睦月ムンク先生の『遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠』が無事完結し、バトンタッチするかのように浜田先生の『炎の蜃気楼R』が始まりました。
遺跡発掘師~のほうはとにかく、発掘作業のあれこれから古い遺物から与那国島の地下洞窟まで。小説で書くのは簡単だけど、それを絵にするのはえらいことやで!という取材も含めて大変なお仕事だったと思います。繊細でドラマティックな表情をみせる無量たちの姿に小説を書く上での刺激を受けました。
ミラージュのほうは、20数年ぶりということで、引き受けてくださった浜田先生のご覚悟は並ならぬものがあったと思います。読者さんが感じることは予想ができる分、それでもやる、とおっしゃってくださったお気持ちが何よりもうれしいです。
おふたかたとも漫画家としてのタイプはまったくちがいますが、それぞれに素晴らしいお仕事をされて、原作者としてはこれ以上ないくらい幸福です。
睦月先生、浜田先生、大変お疲れ様でした。
そして、引き続きよろしくお願いします。
(→長くなりましたのでつづきます)

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