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プチタァン旅行記・フローレス編

プチタァン旅行記 -フローレス編(1)-

  • 2009/10/14 02:29

 夕暮れのフローレス島は、時間の流れがゆったりしてる。
 ケヴァンは、この島の夕暮れ時が好きなんだという。

 フローレス島は、ペテン・イツァ湖に浮かぶ島だ。湖岸からは橋がかかっていて、島全体が小さな街になっている。歩いても三十分ほどで一回りできてしまいそうな、可愛らしい街だ。
 近くには空港もあるし、有名なティカル遺跡なんかは車で一時間ほどのところにある。街の中心はフローレス島の中にあるが、対岸の地域も含めれば、グアテマラ北部では一番大きな街だ。市場やバスターミナルもあり、交通の要衝でもあるので、ケヴァンがこの地域を訪れる時はいつも行動拠点にしているのだという。
 そのフローレス島は、観光客を受け入れるホテルなどもあるせいか、対岸の街よりも落ち着いた雰囲気だ。坂をあがった島の真ん中付近にはカテドラルや学校もあって、ホテルの窓からは、ひしめく建物の赤い屋根越しに湖が望める。
 ホテルに到着したのは、午後四時頃。部屋で荷物を広げていると、
「メシでも食いに行くか。アイザック」
 とケヴァンから声をかけられた。いつも行動が早い人だから、僕がもたもたしている間に、もう着替えまで済ませてる。任務用のブーツを脱いで、足下も軽やかなスニーカーだ。
「ああ、すぐ行くよ。ちょっと待ってて」
「屋上に行ってる。ゆっくりでいいぞ」
 というとケヴァンは先に部屋を出ていった。
 屋上?

(つづく)

※というわけで、突然ですが旅行記開始です。せっかくなのでキャラ日記コーナーで気が向いた時にちびちび連載してみます。小説というより旅行記ですが、ミニミニゲスタァンみたいな感じで。

プチタァン旅行記 -フローレス編(2)-

  • 2009/11/03 02:24

 ケヴァンが定宿にしているこのホテルは、島の真ん中、坂の途中にある。白壁が可愛いこぢんまりした建物には、エレベーターもなく、階段も左官屋さんがぺたぺたと一段一段塗り固めたもののようで不揃いだが、どことなく味があっていい雰囲気だ。真ん中には吹き抜けがあって、観葉植物の蔓が垂れていたりする。
 屋上にあがっていくと、たくさんの洗濯物の向こうに、ケヴァンがいた。いい風が吹いていて、ペテン・イツァ湖が一望できる。
「気持ちいいね。ケヴァン」
「ああ」
 フローレス島は島全体が小高い丘で、ホテルのちょっと上は学校の敷地だ。ほぼ目の高さに校庭があり、放課後のバスケットコートでは子供達が遊んでいる。あの子たちには普段とかわりない一日なんだろうけど、旅人の身にはその日常感が妙に和むんだ。
 そういえば、ティカルに行く途中の村にも小さな学校があった。離れの東屋みたいな一角にお母さんたちが集まっていて「何をしてるの?」とケヴァンが声をかけると、給食を作ってると答えが返ってきた。
 トルティーヤを作ってたのかな。
「旅先で見る日常風景って、なんだか、いいね」
「ああ。異国で、ひとが地に足をつけて暮らしてるのを、肌で感じられるのは、いいものだな」
 そこへ、フロントにいたお兄さんがやってきた。従業員らしき従業員はそのひとくらいしか見かけなかったけど、褐色の肌が健康的で、笑うと白い歯が印象的な、なかなかのイケメンさんだ。お兄さんは時々、湖を指さして何か話している。たぶんとりとめもない会話なんだろうけど、さりげなくそんなやりとりができるケヴァンが羨ましく感じた。
 傾いてきた西日に、湖がきらきら光っていく。
 そしてお兄さんは洗濯物を回収して、去っていく。
「なんだって?」
「ああ。知り合いの店を紹介してくれた。夕日がきれいに見えるそうだ」
「………。僕もスペイン語、習おうかな」
「なに」
「オラ! とグラシアス! とポルファボール! だけじゃ心許ないよ。君みたいにあの人達と気軽に話したい」
「やっとその気になったか。スペイン語が通用する地域は広い。中南米はこれからの国が多いし、習得しとくと何かと便利だぞ」
 ケヴァンは僕に習わせたくてうずうずしてるらしい。ちょっと、はめられた?
「……今日は、西の空に宵の明星がきれいに見えるはずだ。軽く散歩がてらメシにしよう」

(つづく)

*間が空いてスミマセン。オチもストーリーもない旅の一コマ話ですが、まったり読んでもらえると幸いです。

プチタァン旅行記 -フローレス編(3)-

  • 2009/11/06 01:36

 フローレス島の道路は、補修工事をしてるんだとかで、いまどこも掘り返し中だ。
 剥き出しの地面はでこぼこしてて歩きにくく、車も走りにくそうに、えっちらおっちら進んでいる。すれ違うのがやっとな道の両脇には、カラフルな壁のお店が並んでいる。
 ラテンアメリカの家々は、壁を水色に塗ったりピンクに塗ったりして、とってもカラフルなんだ。お店では、ペンキで壁にじかに字を大書きしてしまうので、看板もいらない。このフローレスの街並みもそんな感じ。扉も窓も開けっ放し、中が丸見えだ。
 陽気なラテンアメリカらしくて、僕はウキウキしてしまう。
 湖岸沿いは道になっていて、ぐるっと島を一周できるらしく、時々、観光客とおぼしき外国人なんかも散歩してる。
 僕とケヴァンも肩を並べて、湖岸をのんびり散策だ。
 うち寄せるさざ波の音が優しい。
 渡し舟の乗り場では、対岸へと家路につく人たちが桟橋を行き来している。もうすぐ舟が出る時間みたいで、船頭さんが皆に呼びかけてる。十人も乗ればいっぱいになりそうな乗り合い舟だ。簡単な屋根をつけただけだから、雨の日はたいへんかな。
「なんだか、時間がゆっくり流れてるね」
 日暮れ時だけど、慌ただしさは、あまり感じない。
 みんな、あんまりせかせかしてない感じなんだ。
 湖に面したお店からは、時々、陽気な音楽が聞こえてくる。テラス席で夕暮れの湖を眺めながら、もうビールを飲んでる人もいる。
「グアテマラでは、女性のほうが働き者だって聞く。うちの旦那は怠け者だ、なんてぼやいてるおふくろさんたちの愚痴をよく聞かされた」
「そうなのかい?」
「いや、もちろん働き者の男だってたくさんいるさ。でも確かに女性はよく働く。グアテマラの織物は本当に見事なんだ。色が鮮やかで緻密で、一見、刺繍のようにも見えるが、ぜんぶ手織なんだ」
「へえ」
「みやげがいるなら、おすすめだぞ」
 あ、見抜かれてる。
 僕がずっと兄さんへのおみやげを、虎視眈々、探してることを。
「穏やかな湖だねぇ」
「ああ。風が気持ちいいだろ」
 夕暮れの湖を短パンとスニーカーで散歩する。こんなに無防備にリラックスしてるケヴァンを見るのは珍しい。ここはきっと彼にとって、癒しの場所なんだろうな。
 僕たちは店に入ることにした。

(つづく)

※私たちはメキシコのカンクン(リゾート地。ハワイとラスベガスを足して2で割ったノリ)からフローレスに入ったのですが、物凄くホッとしました。←カンクンのノリに馴染めなかったので;;(笑)ちんまりのんびりなフローレス癒されました。

プチタァン旅行記 -フローレス編(4)-

  • 2009/11/11 14:03

 お店に入ると、いい具合に日没の時間だった。
 何やらウェスタン風な二階部分は、テラスっぽくなっていて、屋根はあるけれど窓はなく、湖に向かって吹きっさらしだ。天井にはくるくると扇風機(…じゃなくて、なんてゆーんだアレ。空気をかきまぜるやつ)がまわってて、いかにもビーチの店みたいで、解放感がある。
 お店にはまだあんまりお客さんがいなくて、ちょうど湖に面した特等席が空いていたので、そこにつくことにした。
「なにを飲む?」
「なにがいい?」
「ここで飲むなら、やっぱりGallo(ガジョ)だな」
「Gallo?」
 鶏のラベルのビールだった。そういえば看板をあちこちで見かける。頼むとすぐにやってきた。グラスに注いで、乾杯だ。
「グアテマラでビールと言えば、こいつだ」
 うまい! ドイツビールみたいに重くはなくて、爽快感がある。金色の見た目もきれいで、味はなんというか、ちょっと初めて飲む感じだ。日本のビールに近いけど、森の風みたいな独特の香りがあって美味しい。こりゃ何杯もいける。
 メニューは割とオーソドックスで、ご当地料理みたいなものは特に見あたらない。とりあえずがっつり食べたかったので肉のグリル盛り合わせを頼んだ。
「ホテルにいた彼に、フローレスの名物料理は何だ? って聞いたんだ。そしたら、なんて返ってきたと思う?」
「なにかな」
「焼きバナナだそうだ」
 とケヴァンは苦笑いしてる。あれか? 朝食の付け合わせに出てきた……。
「ちょっとがっくりきたけどな」
 ケヴァンは呆れているけど、僕はそれを聞いて、なんて可愛らしい島だろう、と思った。焼きバナナ! フローレスの名物料理は、焼きバナナ!!
「でも確かに美味しかったよ」
「まあ……な。アンティグアとか高地のほうにいくと、もっと旨くてちゃんとしたご当地料理がある。今度行く機会があったら食わせてやろう」
 ビーチ風のテラス・レストランからは、きれいな夕焼けが見えた。
 ホテルのお兄さんがお薦めしてくれた通りだ。湖に沈む夕日を眺めながら、僕たちはいっぱいGalloを飲み、お肉を食べた。少し酔いが回ってきた体に、湖から吹く夕暮れの風が気持ちいい。きらきら光っていた湖面も、日没を過ぎて徐々に暗くなり始めた。
 いつになくリラックスしてるせいか、ケヴァンの口もいつもよりなめらかだ。今回は行けなかったキリグア遺跡の話とか、地元のバスに乗って赤ん坊を抱かされた話だとか、担ぎ込まれた旅行者の医療費を全然とらなかったキューバの病院の話とか……。
 空には金星が輝き始めた。

(つづく)

※フローレスの焼きバナナおいしかったですよ!(笑)ホテルのお兄さんの言葉がなんだか微笑ましくてつい書いてしまいました。 

プチタァン旅行記 -フローレス編(5)-

  • 2009/11/24 01:06

「すごい……。あれ金星だよね」
 暗い紺色のグラデーションで彩られた宵の空に、ひとつ、ひときわ存在感のある星が輝いている。ギラギラした光が、今にも目に突き刺さりそうだ。
「あの輝きを見せたかった」
 テーブルに頬杖をついたケヴァンが、ビールグラスを片手に、湖上の明星を眺めている。
「この地で見る金星は格別なんだ。空気が澄んでいる土地は他に幾らでもあるけれど、密林の闇から仰ぐ金星には、奇妙な威圧感すら覚える」
「うん。とっても印象深い輝き方だね」
「マヤの人たちが、金星を太陽の次に崇めた気持ちが、よく分かる。マヤには金星暦もちゃんとあって、宵の明星が消えて、次に太陽と一緒に明けの明星となって現れる日にちも、正確に計算できたんだ」
 明けの明星が現れるのは、戦を開始する合図でもあったとか。
 そんな蘊蓄をGalloをあおりながら語るケヴァンは、どことなく、幸せそうだ。
「昔、ティカルの四号神殿の頂から一晩中、星を眺めたことがある。果てしなく広がる密林の上に、満天の星がさんざめいていた。横たわる銀河に心を吸われた……」
「行きたいな」
 え? とケヴァンがこっちを見た。僕はテーブルに身を乗り出し、
「君と一緒に夜のティカルに行きたくなったよ。今から行けないかな。駄目かな」
「昔はともかく……いまは、警備もうるさいからな」
「行けないかな。駄目かな」
「行ってもいいが、五号神殿のはしごみたいな階段の途中で、動けなくなって騒いだおまえが、夜のピラミッドなんか登れるのか」
 ……それは、言っちゃいけない約束だ。
「君はいいよ。飛んでいけるんだから」
「どっちにしても酒を入れたから、車が出せない。今日はおあずけだ」
 そうだね。
 飲酒運転も駄目だけど、十五歳の外見でお酒を飲みまくるのも、どうだろう。
「大丈夫。いちゃもんつけられたらパスポートを見せる。生年月日をみれば文句は言えない」
 ケヴァンはへっちゃらだ。……偽造だけど。
 ああ、僕もこれくらい厚かましくなれないと駄目だ。
「もう一本、飲むか」
 ほろ酔い気味のケヴァンは、いつにも増して、いい笑顔だ。
 滅多に笑わない彼の笑顔をこんなに見れることだけでも、僕には御馳走かもしれない。

(つづく)

※ティカルの或るピラミッドに、家族で観光に来たらしき欧米系の若者がいたのですが、高所恐怖症だったらしく、なかなかのイケメンだったにもかかわらず物凄いへっぴり腰で階段をおりてまして…。しかもお母さんに「平気だから早くおりてらっしゃい!」みたいなこと言われてて、微笑ましかったです。

プチタァン旅行記 -フローレス編(6)-

  • 2009/12/12 00:17

 さて、満腹になった僕とケヴァンは、夜のフローレスをそぞろ歩きすることになった。
 ほろ酔い加減な頬に、夜風が気持ちいいったら。暑くもなし寒くもなし。お腹も膨れて僕はご機嫌だった。
「そういえば、土産を買うんじゃなかったのか」
 ケヴァンに訊かれて僕は「あ」と声をあげた。
「そうだった! 兄さんへのおみやげ!」
「大丈夫。店はまだ開いてる」
 フローレスは一応、観光地なので、おみやげ屋さんもたくさんあるんだ。
 見れば、道の両脇にみやげ屋が並んで、夜七時過ぎでも営業中。まるでお祭りみたいだ。みやげを買う外国人なんかもチラホラいて、妙にホッとする。なんだか、だんだんウキウキしてきた。小さい時から夜祭りが大好きだったんだ。出店の明かりが暖かいクリスマス・マーケットなんかは、夢みたいに楽しかった。子供の頃は、滅多に夜、出歩くことなんてなかったしね。
 そんな雰囲気が、このおみやげ通りにはある。店の中を覗けば、天井までびっしりお土産品が並んでいる。織物や観光Tシャツ、置物の人形やキーホルダー、ティカル遺跡の絵付き皿……蛍光灯の店内は、ほの暗くて、店番の子供がテレビなんか見てたりして、生活感にも溢れてる。中には結構、埃をかぶってるものもあったけど、物珍しくて、めちゃめちゃ興奮する。
「どうしよう、どうしよう。目移りする。おススメとかある?」
「さっきも言ったが、やはり織物だな」
「カ、カバンとかかな。テーブルクロスなんかもいいかな」
 これなんか、どう? というと、ケヴァンに却下された。
「それはおススメできない」
「じゃあ、これなんかどうだろ」
「イマイチだな。どうせなら、いいものを買え。俺が見てやる」
 ケヴァンの目利きなら安心だ。一口に土産と言っても、いかにも外国人ウケを狙った安っぽい物から、掘り出し物まで、いろいろだ。ケヴァンは店を渡り歩いては眼光鋭く品物を見ていたが、
「これだ。これはいいものだぞ。トドス・サントスのウィピル」
「えっ。このカバンかい?」
「ウィピルというのはマヤの民族衣装だ。模様が緻密だろ。これを織るのは物凄く難しいんだそうだ」
 ほんとだ。赤とピンクを基調に緑や青の糸でモザイク模様みたいなのが一面に施されてる。一見、刺繍に見えるけど、これ全部、手織なんだ。最近は古いウィピルで作ったカバンなんかもあるらしい。
「でもアドルフには可愛すぎるな……」
「なら、レイラのおみやげにするよ」
「レイラ? ああ。ハッディングの娘か。おまえの姉さんみたいな人だったな」
「うん。レイラは織物大好きなんだ。きっと喜んでくれるよ」

(つづく)

※うーん、長くなりますね。次で終わるかな。
 ウィピルのカバンは、私もガイドのKさんの見立てで姉に買って帰ったところ、喜んでもらえました。いまも普段用に持ち歩いてますが、お、と目を惹きます。可愛いです。

プチタァン旅行記 -フローレス編(7)-

  • 2009/12/22 02:12

 結局、兄さんへのおみやげは、悩んだ挙げ句、丸い額に入ったケツァールの刺繍絵(これは僕の見立てだ!)に決めた。目のつぶらなケツァール鳥の後ろにティカルのピラミッドが建つ構図。
 どこからどうみてもティカルみやげだ。
 さっそく財布を開けようとしたら、ケヴァンに止められた。
「言い値の通りに買うつもりか」
 そんなわけで、ケヴァンの値切り交渉が始まった。
 お店のおじさん相手に「もっと安くならないか」から始まって、駆け引き開始だ。「見かけが子供だからすぐナメられる」だなんて愚痴っていたから、ちょっとハラハラ見ていたけど、こんなに堂に入った駆け引きができる子供がいたら、お目にかかってみたいもんだ。
 しかも、彼の口からぽんぽん飛び出してくる歯切れのいいスペイン語は、傍から見てると結構迫力があるんだ。
 ちょっぴり粘った挙げ句、無事折り合いがついたようで、僕はずいぶん安くおみやげを買うことができた。閉店まぎわだったので、おじさん的には一品でも多く売りたかったんだろうな。
「ほら。おまえにもみやげだ」
 とケヴァンがくれたのは、ケツァール鳥のビーズ人形がついたキーホルダーだ。いつのまに。
「今回の任務では、あまり足を引っ張らなかったからな」
「ご、ご褒美かい? うれしいよ!」
「馬鹿。そんなんじゃない」
 と照れ隠しのように言って先を歩いていく。
「さあ、みやげも買えたし。宿に帰るぞ」
 生活感溢れる店の明かりが優しい「みやげ屋通り」を後にして、僕たちは石畳の坂を歩き始めた。空には星、どこからか聞こえてくる陽気な歌。
 自分が旅人だから言うのかもしれないけど、このフローレスみたいな小さな島の小さな町で暮らすのも、なんだか悪くないなって気がした。小さな雑貨屋でも開いて、昼は子供たちがお菓子を買いに来たりして、夜は近所の人がGalloを呑みに……。夜風に吹かれながら、上機嫌でそんな妄想をしていると、
「……この町で暮らしてみたいと思わないか」
 突然、ケヴァンが言ったものだから、僕はドキッとした。
 思わず立ち止まると、彼は肩越しにこっちを振り返り、
「冗談だ」
 と小さく笑ってる。びっくりした。プロポーズでもされたのかと思った。
 でもケヴァンみたいな一見愛想のない人が、この小さな島の雑貨屋で退屈そうに店番してる姿を想像したら、意外にも心がほっこりした。
 宵の明星も、もう地平線の向こうに隠れたようだ。僕たちも帰ろう。
 お宿が待っている。

(おわり)

※ずいぶん長くなっちゃいました;;全然大したエピソードじゃなくて、すみません…。ティカル遺跡に行かれる方はフローレスにもぜひ。という話なのでした。

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