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夏休みカナデ日記

夏休みカナデ日記1

  • 2009/08/20 01:56

嘉手納奏
「残暑お見舞い申し上げます。嘉手納奏、15歳です。
 先生がブログの中だけでもいいから夏休み気分を味わいたいというので、日記を書きたいと思います。

 夏休みに入り、相変わらず緒方家には色んな人がやってきます。
 こないだは日本のお盆を味わいにやってきたグレイグさんの発案で肝試し大会をやりました。オレと内海はお化け係だったのですが、一番恐がらせ甲斐があったのは、予想通りアイザックさんでした。べたなこんにゃくで、きゃーきゃーマジ泣きする姿は、23の男とは思えないほど可愛かったです。
 あんまり怖がるので脅かし役に代わってあげたら、おどかされ役から逆に脅かされる有様です。手に負えません。
 ちなみに、ケヴァンと山瀬が組んで回ったのですが、二人とも全然動じないどころか、ケヴァンに至っては肝試しの意味も分かってないようで冷静に「それで……?」みたいな顔をしてたのが、憎々しかったです。アドルフさんの気持ちがちょっぴりわかりました。
 でも一番厄介だったのはアランさんです。驚くたびにお化けに危害を加えてくるのは、やめてほしいと思いました。
 グレイグさんは遊びの天才です。翌日は多摩川でネイティブアメリカン仕込みのカヌーを教えてもらいました。川遊びはめちゃめちゃ気持ちよかったです。
 木の蔓を使ったターザン遊びとか、岩滑り台とか、グレイグさんがいると、毎日冒険です。正しい夏休みって感じで最高です。
 誕生日だったグレイグさんに、御礼もかねて、浴衣と甚平をプレゼントしたら、超ご機嫌でした。また来年も遊びに来てくれるといいな」

夏休みカナデ日記2

  • 2009/08/22 00:45

嘉手納奏
「夏休みに入ると、ついつい夜更かししてしまいます。
 ひとみ叔母さんたちが寝付いたのを見計らって、時々アイザックさんと居間に忍び込み、こっそり一緒に深夜番組を見たりします。一番のハマリ番組は『カ●ジ』(再放送)です。「ざわざわ…」がアイザックさんとの間でひそかに流行ってます。
 今はなんといっても世界陸上です。地元ベルリンなのでアイザックさんは超盛り上がり中です。朝はラジオ体操で早いのに、『ボルトの200m決勝を何が何でも見るんだ!』といって三時半まで粘ってました。
 途中で寝ちゃったオレをわざわざ起こしてくれたおかげで、世界新記録達成の瞬間を見ることができました。
 アイザックさんは、女子走り高跳びと棒高跳びに夢中です。美人が多いからだと思います。あと最近は水着みたいな格好なので、短パンがお尻に食い込んでたりして、アイザックさんには目の毒です。『あんなにお尻出していいのかな』とうろたえつつも、目が釘付けになってるのが分かります。むっつりなんだから!
 影響受けやすいアイザックさんなので、今朝はダッシュ連発でした。実は100m10秒台前半で走れると自負するアイザックさんは、披露してくれようとしましたが、スタートでこけてしまいました。
 たぶん明日の朝は、夢中で競歩をしまくってると思います」 

夏休みカナデ日記3

  • 2009/08/23 02:15

嘉手納奏
「今朝とつぜんケヴァンに呼び出されました。
 どうしたの? と聞いても、全然答えてくれません。『いいからちょっとつきあえ』と言われて電車に乗りました。
 何か思い悩んでいるふうなので、心配していると、
『相談に乗って欲しいことがある』と言います。
 あのケヴァンから頼ってもらえたのが嬉しかったので、力になるよ! と言ったのですが、なかなか話してくれません。
 着いた先は、マグロが泳ぐ水族館です。
 ケヴァン、マグロが見たかったのかなぁ…。
 と思いながら、一緒にまわっていたのですが、ケヴァンはやっぱりどこか思い悩んでいるようで、切なそうにマグロの回遊を見ています。
 あ、わかった。
 マグロのお刺身が食べたくなったんだ!
 口下手でわがままが言えない性分だから、わざわざここにオレを連れてきて、察してもらおうとしたんだ、きっと!
 オレは、速攻ケヴァンを連れて、築地市場に行きました。ここだったら、おいしいマグロが安く買えそうだったからです。
 ケヴァンは、魚を見る目もプロ級でした。水を得た魚のように、値切りだしたら止まりません。値札通りに買うなんてありえないところは、大阪のおばちゃん級です。バトルも強いのに値切りも強いだなんて。
 結局、大間マグロの3キロの赤身と大トロを、破格の安値で手に入れました。
 よかったね、ケヴァン。今日はマグロいっぱい食べれるね!
 といったら『何のことだ?』ときょとんとしています。
 え、マグロが食べたかったんじゃないの?
 と聞くと、ケヴァンは怪訝な顔をしてこう言います。 
 『アランのバースデープレゼント、何にするか、考えてただけだ』

 ……そんなわけで、今年のアランさんの誕生日は、マグロパーティになりそうです」 

夏休みカナデ日記4

  • 2009/08/24 02:18

嘉手納奏
「内海は、皆さん知っての通り、フィギュアにはまる前はカードゲームをやってましたが、最近また再燃しているようです。
 というのも、こないだケヴァンと対戦して、こてんぱんに負かされてしまったせいです。自分が教えた相手にマジ負けしたのが、よほど悔しかったのか、ムキになってる様子。
 でもカードゲームは日々進化してます。『こんな召喚、昔はなかった!』と涙目になりながら、ブランクを埋めるべく、いま必死に勉強中です。
 内海が教えたカードゲームはその後、超騎士の皆さんの間でも広まってたらしく『騎士の館』では一躍ブームになったとか。アドルフさんも始めたらしく、アイザックさんも帰るたびに対戦してたそうです。
 そのケヴァンですが、最初はまあ普通にやってたのですが、ある日、アドルフさんのめちゃめちゃえげつないデッキ破壊コンボにこてんぱんにされてから、火がついたらしく、以来、真面目に研究して着々と腕をあげてきたそうです。超騎士って、総じて負けず嫌いなんだよな。
 今度、うちで『第一回モカちゃん杯』を開催することになったのですが、お小遣いでちまちまとカードを集めてる中学生と、財力に物を言わせて段ボール買いする超騎士の皆さんとじゃ、圧倒的に不利なような……。
 いや大事なのはレアカードの数じゃなく、戦術なんだと思い直して、オレも頑張ります」  

夏休みカナデ日記5

  • 2009/08/27 19:30

嘉手納奏
「先週末は、山瀬に頼まれて、山瀬の親戚が営む御岳山のみやげ屋さんでお手伝いのアルバイトをしてきました。
夏の御岳山は、夏休みの親子づれで大にぎわいです。
お隣で食堂もやっているので、お昼時はてんてこまいでした。アイザックさんと内海も動員されたのですが、さすが内海はきびきびしてて次々と注文をさばいていきます。吉●屋やマ●ドの店員さんにも負けてません。
アイザックさんは、最初きつねとたぬきを間違えたりしてあわあわでしたが、気がつくと、いつの間にか看板娘ならぬ看板男になってました(金髪ガイジンさんは目立つのです…)。
そんなアイザックさんは、ドイツ語と英語が話せるので、最近御岳山に増えている外国人観光客の案内にかり出され、大活躍です。おかげで食堂もガイジンさんたちで大にぎわい。
昼時が過ぎると、今度はかき氷の時間です。がんがん氷を削って、がんがん振る舞います。登山客の皆さんは、冷たい氷を堪能して涼しそうでしたが、こっちは汗だくです。
突然の夕立の中でも、山瀬は見事なしきりで、オレたちに指示を出します。そのしきりっぷりは、ケヴァンにもひけをとりません。男の中の男です。女の子だけど。
へとへとになったけど、心地よい労働の汗を流せて、とても充実感がありました」
 

夏休みカナデ日記6

  • 2009/08/29 19:06

嘉手納奏
「朝晩めっきり涼しくなってきました。
 緒方家にはささやかな庭がありますが、ここで夕食後、アイザックさんと夕涼みをするのが日課です。二人座ればいっぱいになる床几に腰掛けて、蚊取り線香を焚きながら、スイカを食べたり、線香花火をしたりします。
 (ひとみ叔母さんには芽が出るからって怒られるけれど)スイカの種の飛ばしっこをしてみたり、くりぬいたスイカの皮でお化けキャンドルを作ってみたり……。
 今日は、床几の上で、将棋ならぬカードゲームです。来たるモカちゃん杯に向けて二人でデッキの調整中です。部屋でナイターを見てるつとむ叔父さんが時々、顔を覗かせて、試合速報してくれます。
 ふと思いついてアイスを買いに近所のコンビニに出かけるのも、夜の散歩みたいで楽しいです。途中、盆踊りを見つけては寄り道して、踊りの輪に加わってみたり、夜道でグリコをしながら帰ったり。
 しみじみしたり、どたばたしたりして、あっという間に夏は終わっていきます。毎日のささやかでありふれた出来事が、大切な思い出です。
 いつだったかアイザックさんに「将来の夢が見つからない」って相談したら、アイザックさんは言いました。追い求める夢なんてなくても、皆で過ごす毎日をただ大切に積み重ねていく生き方もあるんじゃないかなって。
 虫の声が秋の訪れを告げています。さあ、もう夏休みもおしまいです。ラスト二回がんばります」

夏休みカナデ日記7

  • 2009/08/30 21:29

嘉手納奏
「緒方家の居間では今、水ようかんを食べながら、皆で選挙速報にかぶりつきです。思い思いに意見を主張する個性豊かなコメンテーターを必死で仕切る小谷さんに萌えます。
 そんな緒方家の面々の中にひとり、見慣れぬ顔がいます。ヴァン派の超騎士ヘルムートさんです。……さっきから竹中さんのコメントにいちいちツッコミを入れるので、うるさいです。
 超騎士の金庫番・経理担当のヘルムートさんの趣味は、意外にも、お菓子づくりです。洋菓子づくりはプロ並の腕ですが、最近和菓子に目覚めてしまい、しょっちゅう青梅にやってきます。前回うちに来た時に出した近所の和菓子屋さんの葛菓子に衝撃を受けたんだとか。涼しげな清流の水みたいな美しさと繊細な甘さは、東洋嫌いのヘルさんの心をも動かしたようです。
 以来、和菓子を作ってきては、オレたちに試食させます。本場の人の口を唸らすことを目指してるそうで、なかなか本格的です。最初は葛と間違えて片栗粉を食べさせられて、悶絶しましたが、色々教えてあげた成果もあって、水ようかんがおいしいです。このまま職人になっちゃえばいいのに。
 ヘルさんの魂には、間違いなく東洋のDNAがあると思います。

さて夏休みも終わりますが、この夏の一番の思い出といえば、やはり、女神降臨です。女神の正体は、もちろん!
 ウルテアさんです。
 清楚な白いワンピース姿で駅に降り立ったウルテアさんは、まさに天使か女神の降臨でしたが、その細い両腕にご祝儀用の日本酒(一升瓶)が二本ずつ計四本あった時は、少しめまいがしました……。
(長くなりそうなので、続きます)」

夏休みカナデ日記7(続き)

  • 2009/08/31 22:37

嘉手納奏
「そして、ついに緒方家にウルテアさんがやってきました。
 来るって分かってたら、もっといっぱい掃除しといたのに!!
 ひとみ叔母さんも、つとむ叔父さんも、見とれてぽかーんとしています。居間にいるだけで女神降臨です。あまりに眩しくて家の中が中尊寺の金色堂になった気分です。
 その夜はウルテアさんを囲んでの大宴会になりました。でも、いただいた一升瓶四本はいくらなんでも多いので「余ったら近所のお祭りの時に差し入れようね」なんて、ひとみ叔母さんと話していたら、余るどころか、全てウルテアさんの可愛いおちょぼ口の中に消えました……。
 ウルテアさんてザルだったんだ……(愕)
 つきあって呑んでた面々は、ジュードさんやアイザックさん含め、皆、見事につぶれました(ケヴァンだけはちゃっかり途中で抜けてアイザックさんの部屋で寝てました)。
 ウルテアさんは『ほほ』と上品に微笑みながら、四升を呑みきって、ちゃんとお風呂にまで入って、つつましく布団で眠る凄さです。
 翌日の緒方家は死屍累々でしたが、ウルテアさんは早起きしてジョギングまでする健康っぷりです。『ジョギング一緒につきあってもいいですか』と聞いたら、にこやかに『いいわよ』と答えてくれました。
 爽やかな朝の風の中、ウルテアさんとふたりで、街をジョギングです。金髪がキラキラして朝日よりも眩しいです。もう地の果てまで走り続けたい気分です。
 河原におりて、憧れの人と肩を並べて座りながら、オレは思い切って尋ねてみました。ウルテアさんの好きな男の人のタイプって、どんな人ですか。
 ウルテアさんははにかんで『強い人よ』と答えました。
 オレは強い人になろうと思いました。
 後日、ケヴァンに聞いたところ、『それは、私よりもお酒が強い人って意味だ』と言われてしまいました。そりゃ無理だ。
 ウルテアさんはうちで遊んだWiiが気に入ったらしく、翌日買って帰りました。まさに夢のようなひとときでした。今度は内海も呼ばなきゃ。

 さて、そうこうしてるうちに夏休みは今日で終わり。
 今日はアランさんの誕生日でした。おめでとうございました。
 マグロパーティはつつがなく終わりました。へとへとなので、詳しい報告は、また明日」

夏休みカナデ日記8

  • 2009/09/01 22:56

嘉手納奏
「昨日は、緒方家の庭とガレージを開放して、アランさんのお誕生会を開きました。内海や山瀬もやってきて、朝から準備で大忙しです。
 先日の経緯から(日記3参照)まぐろパーティと決まっていたのですが、実行委員のオレたちは、この日のために一週間前から、まぐろ尽くしメニューを練り続けてきました。
 まぐろのお刺身、まぐろのお寿司、まぐろの漬け丼は勿論、まぐろ唐揚げ、まぐろ天ぷら、まぐろカレー、まぐろ一口ステーキ、まぐろパイ、まぐろ甘辛煮、まぐろ冷汁まぐろまん、まぐろパエリア、とどめがマグロアイスとマグロみつ豆……、試行錯誤の日々でした。
 サプライズにしたかったので、アランさんには直前まで内緒でしたが、ハッピーバースデーのクラッカーと共に迎え入れられたアランさんは、絶句してました。
『なんで俺がまぐろなんか食わされなきゃなんねんだ』
 と文句を垂れたアランさんに、ケヴァンが一言、
『俺のまぐろが食えないのか』
 と言うと、アランさんは急に殊勝になり「食うに決まってる」とまぐろにかぶりつきました。全部ケヴァンが築地で仕入れたんだよ、と教えたら、俺のために! とひどく感動してました。
 メインディッシュは、ケヴァンが当日の朝、特別に仕入れてきたまぐろのかま焼きです。まぐろの頭を、ガスバーナーでまんべんなく焼くという、豪快で、野趣溢れる一品です。アランさんは感涙しながら食べていました。
 最後はもちろん、まぐろケーキです。苺の代わりに、まぐろのシロップ漬けをのせるというのは、アイザックさんの発想です。食べた後、アイザックさんはアランさんの強烈な上手投げをくらってました。(もちろんオレたちは普通に苺で食べました)
 アランさんはケヴァンの愛のこもったプレゼントが余程嬉しかったのか、『次のおまえの誕生日には俺がかつおパーティを開いてやる』と意気込んでますが、それは勘弁してほしいそうです。
 近所の人にも振る舞われたまぐろは、きれいに皆のおなかに消えました。
 しめは、今年最後の花火でした。ラムネを飲みながら、コンクリートにはねる花火を見つめて、去りゆく夏を噛みしめます。アイザックさんが隣でねずみ花火に追われています。ケヴァンは穏やかな目で線香花火を見つめています。内海と山瀬とアランさんが落下傘を追いかけます。もちろん緒方家のみんなもです。
 明日から学校かと思うと、なんだかガックリでしたが、最後にみんなの笑顔が見れて嬉しかったです。
 さよなら、夏休み」 

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