嘉手納奏
「今日は仰木先輩の誕生日です。なのでお祝いをしようと思い、プレゼントを持って会いに行きました。なんと仰木先輩とふたりきりで焼き肉屋デートです。とっても緊張しました。
　仰木先輩は憧れの人です。生ビール飲むのも、カルビ焼くのもタンをひっくり返すのも、何もかもが男前でドキドキしました。『どんどん食え』と焼けたところから皿に分けてくれます。山盛りです。仰木先輩手ずから焼いてくれた塩カルビ…。とろけました。
　焼き肉を食べながら、仰木先輩は相談に乗ってくれます。主人公ならではの悩みを色々聞いてもらいました。『あーわかるわかる。それはな』とうなずいてくれる仰木先輩がとても頼もしかったです。オレも仰木先輩みたいな主人公になりたいと思いました。
　そんなこんなで話が盛り上がり、今度黒髪キャラだけで飲み会やるか、みたいな話になりました（未成年なんですけど）。うちは黒髪キャラふたりいるんですけど、つれてきていいですか、と聞いたら、気前よく『つれてこい』と言ってくれました。ケヴァンと仰木先輩は気が合いそうだな。
　さっそくケイさんにもメールしたら、喜んで、榛原さんも連れてくると返事が来ました。え、いいのかな。
　イルゲネスにいるフォンさんにはどうやって連絡つけようかと悩んだ結果、なぜかワタルさんに頼むことになりました。なんでだろ？
　近々開催される模様です。
　中央線のホームで『じゃまたな』と手を振って去ってく仰木先輩は、どこまでも男前でした。ドキドキしっぱなしで心臓アドルフはへとへとです。
　仰木先輩、お誕生日おめでとうでした」

嘉手納奏
「今日はクレセント・カンパニーで榛原さんのお誕生会を開くというので、アイザックさんと一緒にお邪魔してきました。
　お誕生会というか、駄目出し会というか……。
　榛原さんへのプレゼントは、基本的に物ではなくお芝居です。特に役者の人はひとり持ち時間３分で、榛原さんの劇の一節をやるのが恒例です。これが大変！！
　ケイさんもワタルさんも、お誕生日なのになんかぴりぴりしてるなあ…と思ったら、ひとり芝居のためでした。ケイさんは『狗賓星』を、ワタルさんは『レディ・ピュグマリオン』をやったのですが、榛原さんから演じた時間の十倍駄目出しされて、しまいに稽古までつけられて、お誕生日の出し物なのか集中稽古なのか、分からなくなってしまいました。数々の伝説を生んだ榛原さんの生稽古を見れたのは楽しかったんだけど、こっちまで肩に力が入っちゃって大変でした。
　でも榛原さんは心なしか楽しそうでした。
　連城さんは役者ではないのですが、榛原さんのたっての希望で朗読をさせられて、たいへん……たいへん苦悶していました。
　連城さんの時だけは、榛原さんはにやにやするばかりで、駄目出しはしません。どちらかというと羞恥プレイな感じでした。
　最後の締めは、藤崎さんの朗読だったのですが、このときばかりは榛原さんも教会で賛美歌を聴いてるみたいな表情でした。本当に藤崎さんの声が好きなんだなあ。
　その後、オレとアイザックさんも飛び入りで一芸を披露しました。某アニメのエンディング曲を振付つきで歌いあげました。もう息があっちゃって大変です。葛川来宮コンビにも負けません。これには榛原さんも目を白黒させてました。でも喜んでもらえたみたいです。
　何の曲だと聞かれたので、今度そのアニメのＤＶＤを貸してあげることにしました。榛原さんもハマってくれるといいな。
　その後はお待ちかねのバーベキューパーティです。
　牛一頭分の肉が用意されててびっくりしましたが、八割方は榛原さんの胃袋に収まってしまいそうです。榛原さんお誕生日おめでとうでした」　

嘉手納奏
「今日は誕生日でした。例年通りだとオレが朝起きてくると、必ずひとみ叔母さんが『お誕生日おめでと！』と真っ先にプレゼントを渡してくれるのですが、今日は朝起きてきても普通に『おはよう』と言うだけで、何もありません。あれ？　と思って朝ごはんを食べたけど、やっぱり何もありません。アイザックさんも、普段と変わらずです。
おかしいな。もしかして二人とも忘れてるのかな？
結構楽しみにしながら起きてきたのに、とがっかりです。
学校に行って内海たちに会っても、誕生日に触れる気配もありません。ケヴァンたちからも音沙汰なく、結局、何もないまま下校しました。
家に帰っても特に誕生日を祝う気配はありません。しまいには『みりん切らしちゃったから買ってきて』とお使いを頼まれる始末です。がーん。どうしよう。やっぱりみんな忘れてるんだ。
スーパーを彷徨いながらオレは悩みました。やっぱり自己申告すべきだろうか。でも自分で言い出すのもいい年こいてみっともないし、気づいてもらえないならこのままスルーしようかなあ、とちょっと情けなくなり、軽く涙ぐみつつ、家の玄関をまたいだ途端。
『ハッピーバースデー！！！！』
いきなりクラッカー連発です。さっきまで普通だった家の中は物凄い飾り立てられてパーティー会場と化してます。テーブルにはごちそうと、でっかいバースデーケーキです。
そう。みんなはオレのためにベタベタなサプライズパーティを用意していたのです！！
緒方家も超騎士のみんなも勢揃いです。オレが出ていったのを見計らって大急ぎで飾り付けをしたそうです。指揮を執ったのはケヴァンだそうでそのへんの連携はさすがミッション慣れしています。もう何もかもがベタすぎてオレは涙がにじみました。
ケヴァンからのプレゼントはケヴァン手ずから手編みのアルパカセーター。内海からは神楽崎卓子のフィギュアです。山瀬はメイド姿でオムレツにモカちゃんの絵を描いてくれました。アランさんからはカツオのたたきの実演（煙で近所迷惑でした）。アドルフさんからは祝電と一緒に蜜酒ゼリー一年分が贈られてきました。
そして注目のアイザックさんのプレゼントは、大きなアルバムです。まだ一枚も写真の貼ってない手作りアルバムです。最初のページに大きく『ハッピーバースデー！カナデ』と下手っぴな字で書いてあります。
『この一年も思い出いっぱい作ろうね』
扉を飾る最初の一枚は勿論、今日の集合写真です。
サイコーの誕生日でした！」