レポート:垳田はるよ
【2017.07.29 桑原水菜トークイベント&サイン会】
昨年の夏に続いて、今年も明正堂書店アトレ上野店様主催のトークイベントが行われました!
今回は会議室をお借りしての開催で、前回よりも参加人数が大幅アップの50名。教室サイズのお部屋に椅子を並べて、ホワイトボードには『遺跡発掘師は笑わない 元寇船の眠る海』表紙のポスターが貼られており、「THEトークイベント!」という雰囲気です。
参加者のみなさんが着席したところで、今回のイベントを企画してくださった店長の増山さんがご登壇。「先生を迎える練習をしましょう!」と会場の空気を温めてくれます。
練習の成果を発揮した盛大な拍手で迎えられた先生。最初は緊張した様子でしたが、会場にあふれる熱気と、増山さんの情熱的なトークで、どんどんほぐれていきます。
事前の打ち合わせでは、「先生、泥舟に乗った気持ちで!(増山)」「泥舟かい!笑(桑原)」という会話があったそうで、なんかもう漫才コンビ…(笑)。息が合っていたのも納得です。
トークコーナーは、増山さんが感想を挟みながら質問を投げかけ、先生がそれに答える、という流れだったのですが、増山さんの感想がめっちゃ熱い! 作品を丁寧に深く読み込んでいるのが伝わってきます。また参加者のみなさんも、その感想に笑ったり大きく頷いたり……何度も心が一つになる会場でした。
トークをいくつか紹介します!
増山「今回の舞台は、どうやって決めたのですか?」
桑原「水中発掘をやりたい、という話がまずありまして、とにかく一度取材に行きましょう、と。取材に行って、水中発掘とはどういうものかを学んで来よう、ということで、今一番ホットな水中発掘現場だという長崎県松浦市の元寇船発掘現場に行きました。行った結果、元寇船が面白いねということになり、テーマが決まりました。良い題材をもらいながら、水中発掘のことも学べて、収穫の多い取材になりました」
増山「黒木仁が好きな私のために、何かエピソードを教えてください」
桑原「カレーライスが好き。黒髪、褐色肌、縮れ髪を出すと筆が進むんですよ。なので、一つの話に一人ずつ出す。出てきたら『あぁ〜…』って思ってください(笑)」
増山「野崎さん(KADOKAWA担当さん)イチ推しのJKことジム・ケリーについて教えてください」
桑原「面白い外国人が好きなんです。最初はクールビューティー的に登場してかき回す役にしようと思ったんですけど、忍とのバランスを考えたとき、もうちょっとひょうきんにしたほうがいいのかな、と思って……。蕎麦が好きだと言ってました」
増山「無量くんが物語の中で成長しているのを感じます。先生は無量くんについてはどんなふうに感じていますか?」
桑原「今回は年の近い広大が出てきたおかげで、発掘中でも素になる無量、遠慮しない無量を書きやすかったです。誰と絡ませるかによって全然違ってくるので、無量の素の顔が出せたのは広大がいたからだと思います。広大の名前ですが、前回の取材で中尊寺に行ったときに『無量広大』という額が飾ってあったんです。『無量だ』と思った後に『広大』という文字を見て、『バディだ!』と思って、早速使いました」
増山「忍さんは何でもできるな、と。水上バイクも乗れるんかい! と思いました」
桑原「あれは私もやりすぎたかな、と思いました(笑)。でも彼は養子に行った先でいろいろやらされてるんだと思います。リゾート・アクティビティー的なものは全部制覇している。バナナボートとかも(笑)」
増山「藤枝教授と無量くんは耳の形しか似ていないんですか?」
桑原「指の形も似ています。野崎さんと飲んだときに、無量父話しで盛り上がってしまって、無量父のポテンシャルすごいんじゃない? と(笑)。まだオフレコなんですけど、次は短編集をやろうという話になっていて、『無量の子供時代はどうですか?』と言ったら、『そこで無量父の話も書きませんか?』という話が出ています。『ただの嫌な奴にはしたくないですよね』と野崎さんに言われて、私はどちらに振ろうか考えていて、息子に立ちはだかる父親というのは決まっているんですけど……」
増山「ただの嫌味な男じゃないところが桑原作品の魅力です」
桑原「嫌味や悪口は書きやすいんです。憎まれ口とかスラスラ書ける(笑)。彼は中華が好きで、何かあったら必ずみんなを中華に連れてってくれます。『好きなだけ食え、ここは俺が持つ(低音)』」
増山「めっちゃ良い人!」
そして、かなりレアなお話も!!
作中に登場した太宰府天満宮のお茶屋さん。先生は時間がなくてその場には行けなかったのだけれど、作品に使いたい……ネットで調べるか……と思いつつツイッターを見ていたら、なんと! 舞台『炎の蜃気楼 昭和編』で景虎様を演じていらっしゃる富田翔さんが、そのお茶屋さんに居る写真を発見!!
「さすが景虎様!(桑原)」、沸き起こる拍手(笑)。富田さんは、お茶屋さんで撮った写真をメールで送ってくださったそうです。
さらに、天満宮の裏にある神社でバトルする場面については、
桑原「そこでバトルできますか?」
富田「余裕っすね」
というやりとりもあったそうです(笑)。
「広大が更衣室の鍵を持って行っちゃうシーンは下着泥棒みたい」
「風呂のシーンとかすごく嬉しくて(笑)。修学旅行みたいで楽しいな〜って思いながら書くと、風呂のシーンが必ず長くなるんです」
「男ばかり書いているとヒゲが生えてきそうになる。鏡を見ると『男がいる』って思います……気をつけないと」
「長崎で戦時中の潜水艦(終戦後、沈められ廃棄された)が見つかったというニュースがあって、『これ無量で出したやつだ』って。無量もその潜水艦を探ってるんですよね。現代物を書いていると、書いたことが現実でも起こることがあり楽しいです」
など、裏話をいろいろ話してくださいました。
最後に思いがけないイカトーク。
増山「呼子名物・いかしゅうまいは食べましたか?」
桑原「食べました。『名物は食べておけ』と思って、いかしゅうまいとイカ刺しは食べました。イカ刺しは生きたままなので、イカが見てるんですよ、皿の上から。『ボクを食べるの? 食べちゃうの?(高音)』『そうだよ、キミを食べるんだよ。美味しくいただくからね(低音)』と。だんだん死んでいく目が切なかったですけれど、これが命を分けてもらうということだなぁと思いながら、翌日の取材に備えて美味しくいただきました」
イカvs.先生の小芝居は、ぜひ音声を想像してください♪
ファンの方に質問を呼びかけると、照れずに手を上げてくださいます。
Q「先生はハイペースで執筆なさっていますが、そのペースは、先生のお好みのペースなのか、大人の事情でハイペースになるのかが気になります」
桑原「放っておくと書けない……前に進めないので、多少大人の事情で『この日に出しますよ、書いてくださいね』とやってもらってスピードアップしているんだと思います。筆が乗ると自然と早くなっていきます。第1章が一番時間がかかります」
Q「何ページにまとめてくれ、というような指定はあるのですか?」
桑原「無量は内容優先でやらせてもらっています。途中まで書いて『もう少し増えそうです』と伝えると、『じゃあ1台増やしましょう』と調整してくれます」
Q「このシリーズで、先生の中でかっこいいナンバーワンは誰ですか?」
桑原「黒木仁じゃないですか?(笑)」(一部の方が喜びの拍手・笑)
約70分のトークタイム、ぎゅぎゅっと詰まったお話の数々で、めっちゃ盛り上がりました!
「無量シリーズ、まだまだ続きますので、応援よろしくお願いします(桑原)」という締めの挨拶をいただき、サイン会へ。
一人一人とお話しする時間が用意されているので、みなさんお手紙を渡しつつ先生と言葉を交わせたようです。
サインを終えた方から解散となったのですが、会場を出るとき増山さんに「楽しかったです」「またやってください」と声をかけていく方が多く、本当に楽しんでくださった空気がありました。
また、バラバラに座っていた方々が、サインを待つ間や終わってから挨拶をしあったりしていて、ファンの方々の間でも交流があるのだなぁ、と歴史(桑原史?)を感じました。
会場を出ると、エントランスにお見送りをしてくださる方々が! 今回は広いエントランス&雨なので他に人がいない、という状況でしたが、ちゃんと端のほうに並んで待っていてくださるみなさま……最後までありがとうございました!!
打ち上げの席で、「書く時間とかページ数のこととか聞かれたけど、そういうの気になるの?」と不思議そうだった先生に、「もっと時間があったら違う展開になってたのかとか、ページ数の関係で削られたところがあるなら、何か別の方法で見せてほしい、という意味だと思います」と答えておきました(←合ってますよね?)。よくわからないまま答えてくださってたのかと思うと、先生カワイイ。
ちなみに、その質問に野崎さんは、「原稿を鬼のように取り立ててると思われてるのかしら」とドキドキなさっていたそうです(笑)。
今回も、参加してくださったファンの皆様、書店さんなのにイベント会社のようなスムーズな進行で楽しいイベントを展開させてくださった明正堂書店アトレ上野店の皆様、ご協力くださったKADOKAWA様、ありがとうございました。
次の機会があることを祈っています……!!